NEC、2025年度から株式報酬制度「NEC Value Shares」導入へ 企業価値向上と従業員エンゲージメント強化を狙う

2025年3月17日、NECは新たな株式報酬制度「NEC Value Shares」の導入を発表した。この制度は同年度内に開始され、従業員の業績意識や株価への関心を高め、企業の中長期的な成長を支えることを目的としている。
NEC Value Sharesの導入背景と目的
NECはグローバル市場での競争力を強化するため、従業員のエンゲージメント向上を重要な課題として掲げている。特に、急速に変化するビジネス環境に対応するには、従業員が企業成長に積極的に貢献できる仕組みが不可欠となる。
こうした背景を受け、NECは株式交付信託(※)を活用した業績非連動型の株式報酬制度「NEC Value Shares」を導入することを決定した。
本制度では、従業員が自社株を無償で受け取ることができ、企業の成長と個人の利益を結びつける仕組みを提供する。
初年度は統括部長など戦略的なポジションにある約400人が対象だが、将来的にはNECおよび一部のグループ会社を含む6,000人以上へと拡大される予定だ。
また、2026年度からは持株会制度の拡充も予定されており、NECおよび一部グループ会社を含む約60,000人の従業員が自社株を無償で受け取る機会を得ることになる。これにより、経営への関与が一層促進されることが期待されている。
今回の施策は「2025中期経営計画」に基づいており、「Employer of Choice(選ばれる企業)」の実現を目指す戦略の一環として位置づけられている。
NECはこれらの取り組みを通じて従業員の業績意識を高め、企業価値の向上を図る考えだ。
※株式交付信託:企業が信託を活用して従業員に株式を交付する仕組み。一定の条件を満たした従業員が対象となることが一般的で、インセンティブ設計に用いられる。
制度の影響と今後の展望
今後、NECはグローバル市場での競争力をさらに強めるため、報酬制度の拡充や株式を活用した長期的なインセンティブ設計を進める可能性がある。対象範囲の拡大に加え、業績連動型の仕組みを導入することで、従業員のモチベーションをより直接的に高める施策が検討されるのではないか。
また、持株会制度の拡充によって、NECの企業文化そのものが変化する可能性もある。従業員の株主意識が強まることで、ボトムアップ型のイノベーションがより活性化するかもしれない。
一方で、株式市場の変動リスクを考慮し、従業員の資産管理をサポートする施策も必要となる。従業員が自社株を無償で受け取れることは魅力的だが、個々の成果との関連が薄い場合、報酬制度としてのインセンティブ効果が限定的になるリスクにつながる。
NECの取り組みが成功すれば、国内他企業にとっても参考事例となる可能性が高い。特に、エンゲージメント向上と企業価値の向上を両立させる手法として、株式報酬制度のあり方が改めて議論される契機となるだろう。
NECが今後どのようにこの制度を発展させていくのか、引き続き注目したい。