エヌビディアとパープレキシティ、欧州現地語AI強化で提携拡大 地域特化型生成AIの普及加速へ

2025年6月11日、米エヌビディアとAI検索スタートアップのパープレキシティは、欧州・中東のAI企業十数社と提携し、地域言語に対応した生成AIモデルの強化に乗り出すと発表した。米ロイターが報じた。
欧州各国で現地語AIの高度化を支援
米エヌビディアと新興AI企業パープレキシティは、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、スウェーデンの複数の欧州企業と提携し、現地語に特化した生成AIモデルの強化を推進する。
この取り組みは、英語や中国語に比べて学習データの少ない言語圏において、AIモデルの性能格差を埋めることが狙いだ。エヌビディアは、各国企業と連携し、高度な推論が可能なローカルAIモデルの訓練を技術面で支援するという。
同社の法人向け生成AIソフトウェア部門を率いるカリ・ブリスキ氏は、「AIモデル企業が現地語で、合成データとして知られる新たなデータを生成し、モデルを改善できるよう支援する」と述べた。
ローカルモデルの訓練後は、パープレキシティが欧州域内での展開を担当し、現地企業が自社データセンターでAIを活用できるようにする方針だ。これにより、欧州のAI基盤が地域独自の課題に即したものへと進化する可能性がある。
地域密着型AIで産業支援 競争力強化も課題残る
今回の提携により、生成AIが抱えてきた「主要言語偏重」の課題が一部是正される見込みだ。現地語対応のAIモデルが進化すれば、欧州企業はより柔軟で文化適応性の高いAI活用が可能になり、法務、医療、教育などの分野で導入が加速することが期待される。
また、AI処理を現地のデータセンターで完結させる体制は、欧州連合(EU)が推進するデジタル主権の理念にも合致しており、データの越境リスクを抑えつつ、生成AIのビジネス活用を拡大する効果がある。
一方で、現地語向けモデルの訓練には、文脈や文化的表現への深い理解が求められるため、汎用モデルに比べて開発コストや時間がかかる可能性も指摘される。
さらに、生成AIの透明性や倫理面への対応は、国ごとに法規制の違いが存在するため、技術の導入と普及を両立させるには慎重な展開が必要だ。
エヌビディアとパープレキシティによる今回の取り組みは、地域ごとのAI最適化という新たな潮流を象徴しており、グローバルAI企業が今後どのように「ローカル」と向き合うかが問われている。