TSMC、熊本第2工場に170億ドル投資 AI半導体「3ナノ」が国内初量産へ

2026年2月5日、半導体受託製造最大手TSMCは首相官邸で高市首相と会談し、熊本第2工場で回路線幅3ナノメートル半導体を国内初量産すると表明した。投資額は170億ドル規模に拡大し、日本がAI向け先端チップの供給拠点へと転換する節目となる。
熊本第2工場で国内初3ナノ量産決定
TSMCの魏哲家会長兼CEOは、熊本県菊陽町で建設中の第2工場について、6ナノ中心だった従来計画を見直し、より微細な3ナノ(※)半導体の量産へ切り替えると明らかにした。
3ナノ世代の国内製造は初めてであり、AI向けデータセンターや高性能演算用途への供給を想定する。
背景には世界的に生成AIの需要が急拡大し、学習や推論を担う先端ロジック半導体の確保が各国の競争軸になったことがある。これに伴い設備投資は122億ドルから170億ドル規模へ増額される見込み。
最先端露光装置など高額な製造装置の導入が必要になるため投資額が上方修正された。経済産業省は追加支援を検討し、従来の最大7320億円補助に上積みする可能性もある。
会談で高市首相は「最先端工場の国内立地は経済安全保障上きわめて重要だ」と述べ、政府として全面的に協力する姿勢を示した。
魏氏も「日本のAIビジネス基盤を形成する」と強調しており、今回の戦略的投資は国家プロジェクト級の投資と位置付けられる。
※3ナノメートル:半導体回路の線幅世代を示す指標。数値が小さいほど処理性能と省電力性が高まり、AIや高性能プロセッサに不可欠な最先端技術。
供給安定と巨額投資リスクの分岐点
最大のメリットは、先端半導体の国内調達が可能になる点にある。
これまで台湾や米国依存だった供給網が分散され、データセンター運営企業やAI開発企業は調達リードタイムと地政学リスクを同時に下げられる。
関連装置、素材、人材が集積すれば、九州が新たなシリコンアイランドとして再興する展開も期待できる。雇用確保の観点からもメリットがあると言える。
一方で、170億ドルという巨額投資は需要変動に直結するハイリスク案件でもある。
AIブームが鈍化すれば設備過剰に転じ、補助金負担が財政課題として残る恐れがある。
ただし今後しばらくはAI関連をはじめ、半導体需要が途絶えることは無いと考えられており、リスクは少ないと言えるだろう。
電力確保や熟練技術者不足についても懸念材料で、今後はIT関連に特化した教育プログラムの制定など教育面においても改革が必要と言えるだろう。
半導体はAI時代の基幹インフラであり、日本が「設計だけでなく製造も担う国」へ戻れるかどうか。かつての「ものづくり大国」としての覇権を取り戻せるかの瀬戸際となっている。
関連記事:
AI需要が押し上げるTSMC最高益 熊本第2工場は顧客主導で慎重判断












