韓国キムチ研究にAI導入 発酵9成分解析で“最適な味”を科学的に再現へ

2026年2月2日に韓国の世界キムチ研究所が、AIを活用してキムチの発酵段階を高精度で予測する技術を開発したと発表した。経験頼みだった熟成管理を数値化し、「最もおいしいキムチ」を再現可能にする取り組みである。
AIが発酵9成分を解析、味を予測
研究チームは、乳酸菌の働きで刻々と変化するキムチの化学成分をAIの機械学習(※)で解析し、発酵段階を精密に分類する予測モデルを構築した。
これまで製造現場では、温度や原料差、微生物構成のばらつきから熟成の判断が難しく、職人の経験や感覚に依存する面が大きかった。
そこで無菌キムチを用いて条件を統制し、10種類の乳酸菌を単独または同一比率で接種。6度、10度、15度の温度帯で発酵させ、微生物の構成変化と味の指標となる成分を体系的に比較した。酸・糖・アミノ酸などの動きを統合的に捉えることで、人の舌では区別しにくい境界も数値として把握できるようになった。
最終的に抽出されたのは、乳酸やコハク酸、ショ糖、果糖、グルタミン酸などの計9成分である。これらを基に発酵段階を自動判定するモデルは、外部の公開データでもAUC0.8超の精度を再現し、実際の製造ラインでも活用可能と確認された。
発酵の“勘”がアルゴリズムに置き換わる転換点と言える。
※機械学習:大量のデータから規則性を自動抽出し、予測や分類を行うAIの中核技術。人手のルール設定を最小限に抑えられる。
品質安定の利点と画一化リスク、食品AIの未来
この技術の最大のメリットは品質の標準化だ。熟成の最適タイミングを数値で示せれば、工場や季節が変わっても同じ味を再現でき、量産体制や海外展開が容易になる。
レシピや菌データを蓄積すれば、発酵食品をデータ資産として管理する“フードテック”投資も進み、食品産業の生産性向上に直結する可能性が高い。
一方で、味覚の最適解をAIが定義することには慎重論もある。家庭や地域ごとに異なる個性が均質化され、伝統的な職人技により得られる「味の楽しみ」が評価されにくくなる懸念があるためだ。
また、AIが算出したデータが必ずしも万人の味覚に準ずるものとは限らないため、キムチメーカー各社が同一システムを使用することは好ましくない。
各社の製造思想に合わせてアルゴリズムを変更する必要性が求められるだろう。
食品製造において発酵は非常に曖昧な工程だ。
科学的に解明されていない部分も多く、全ての製造過程を数学的に数値化することは現段階では困難と言える。しかし、一部だけでもデータで制御する流れが生まれたことにより、一定の品質の均一化は望めるだろう。
今後は味の設計をソフトウエアで行う時代に入り、食品開発は「経験」から「モデル駆動」へ移行していく公算が大きい。
世界キムチ研究所の取り組みは、その先陣を切った象徴的なケースと言える。
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