武田薬品のAI創薬が乾癬経口薬で成果、後期試験16週で有効性示す

2025年12月18日、武田薬品工業は、AIを活用して開発した尋常性乾癬の経口治療薬「ザソシチニブ」が2つの後期臨床試験で良好な結果を示したと発表した。
米国を中心とする皮膚疾患治療市場で、創薬手法と治療選択肢の両面に変化をもたらす可能性がある。
武田薬品、AI活用の乾癬治療薬が後期試験で有効性確認
武田薬品は18日、AIを用いて開発した尋常性乾癬治療の経口薬ザソシチニブが、2つの後期臨床試験で主要評価項目を達成したと明らかにした。
1日1回の経口投与を16週間続けた結果、被験者の半数以上で皮膚病変が完全、またはほぼ完全に消失したという。
注射剤が主流の同分野において、服薬の利便性と高い有効性を同時に示した点が特徴である。
同社は2026年に米食品医薬品局(FDA)などの規制当局へ販売承認を申請する計画だ。
承認されれば、ブリストル・マイヤーズの「ソーティクツ」やアムジェンの「オテズラ」といった既存の経口薬に加え、J&Jの「トレムフィア」やアッヴィの「スキリージ」など注射剤がひしめく市場に参入することになる。
ザソシチニブは、武田薬品が2022年に米新興ニンバス・セラピューティクスから最大60億ドルで取得した開発品である。
ニンバスはAIを活用して化合物を特定しており、武田にとってはAI創薬の成果を示す象徴的な案件だ。研究開発トップのアンドリュー・プランプ氏は、「この薬剤が示す有効性の水準は、安全性プロファイルや投与の利便性と合わせてこの分野では他に例がない」と述べている。
AI創薬の加速がもたらす恩恵と競争激化のリスク
今回の結果は、AIが新薬開発の成功確率を高め、開発効率を改善し得ることを示唆している。
候補化合物の探索を高速化できれば、研究開発コストの抑制や上市までの期間短縮につながる可能性がある。武田薬品がAIを創薬の中核に据える方針を掲げる背景には、こうした構造的な競争力への期待もありそうだ。
一方で、市場環境は容易でないかもしれない。
経口薬である点は患者負担を軽減する利点になるが、長期安全性や実臨床での効果が十分に示されなければ、処方の切り替えは限定的にとどまる可能性もある。
TDカウエンのアナリストは、ザソシチニブのデータが競合薬を上回る水準だと評価し、ピーク時売上高30億〜60億ドルという武田の目標も現実的だと指摘している。ただし、経口免疫治療薬市場全体については慎重な見方を維持している。
総じて、AI創薬は万能ではないが、成功例が積み重なれば製薬業界の開発モデルを変える起点となり得る。今回のザソシチニブは、その試金石になるかもしれない。











