メリアム・ウェブスター、「slop」を今年の単語に AIの低品質コンテンツを象徴

2025年12月14日、米国の英語辞典メリアム・ウェブスターは、AIによって量産される低品質なデジタルコンテンツを指す言葉である「slop」を、今年の単語に選んだと発表した。
生成AIの普及が情報環境に与えた影響を象徴する選定となった。
AI量産時代を象徴する言葉「slop」
メリアム・ウェブスターはslopを「大抵は人工知能(AI)によって量産される低品質のデジタルコンテンツ」と定義した。
内容の薄い短尺動画や、しゃべる猫、AIが自動生成した書籍などといったコンテンツがその例として挙げられている。
同辞典によると、slopは18世紀に泥やぬかるみを意味する言葉として使われ始めたという。19世紀には残飯や食べ残しを指す語へと変化し、その後「くず」や「ほとんど価値のない産物」という比喩的意味が一般化した。
なお、今年は他の英語辞典も、テクノロジーに関連する単語を相次いで選出している。
コリンズは「vibe coding」、ケンブリッジは「parasocial」、オックスフォードは「rage bait」を今年の単語に選び、テクノロジーが感情や行動に与える影響への問題意識が共有されている状況が浮かび上がった。
slopが突きつける利便性と劣化の境界線
slopの選出は、情報流通の効率を飛躍的に高めた生成AIのメリットと、その裏側にあるデメリットを同時に映し出していると言える。
生成AIの「低コストで大量生産できる」特徴は、個人や企業の発信機会を広げた一方で、受け手にとってはノイズの増加という負担を生む可能性もある。
メリアム・ウェブスターはslopを「それをうっとうしく思う人もいれば、それに食いつく人もいる」とも指摘している。
この構図は、アルゴリズム主導のプラットフォームが関心の分断を加速させている現実とも重なり得る。
今後、slopという言葉が定着すれば、企業やメディアは「量より質」を意識した戦略転換を迫られる可能性がある。
生成AIが人間の創造性を補助する道具として使われるか、それとも価値を希薄化させる存在になるか、人間の役割も改めて問われているのかもしれない。











