エルサルバドル、公立学校に生成AI「Grok」導入 100万人教育を国家主導で刷新

中米エルサルバドル政府は、米xAIが開発した生成AI「Grok」を公立学校教育に導入すると発表した。
全国規模でのAI教育活用は世界初となる。対象は100万人超の児童・生徒だ。
エルサルバドル、Grokを5000校超に導入
エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、イーロン・マスク氏率いるxAIと連携し、生成AI「Grok(※1)」を公立学校に導入すると発表した。今後2年間で5000校以上に展開し、100万人を超える児童・生徒にAIを活用した学習支援を提供する計画である。
同国では幼稚園から高校まで約120万人が公立学校に通っており、事実上、全国の初等・中等教育を対象とした大規模プロジェクトとなる。
政府とxAIの共同開発する当システムは、都市部だけでなく、教育資源の乏しいへき地でも、一人ひとりの学習レベルや進度に応じた指導を可能にするという。
ブケレ政権は治安対策で高い支持を集める一方、規律と統制を重視した教育改革を進めてきた。学校現場での例としては、ジェンダーに配慮したインクルーシブ・ランゲージ(※2)の使用を禁止するなど、価値観の明確化を打ち出している。
一方Grokは、「ホロコースト否定発言」の疑いでフランス当局の捜査を受けている。
※1 Grok:米xAIが開発する生成AIチャットボット。X(旧ツイッター)と連携し、最新情報を参照する設計が特徴。
※2 インクルーシブ・ランゲージ:性別や属性による差別を避け、多様性に配慮した表現を用いる考え方。
AI教育の利点とリスク 国家導入モデルの行方
生成AIを国家主導で教育に組み込む試みは、学習格差の是正という点で大きなメリットとなるだろう。
教師不足や教材の地域差が深刻な国において、AIが個別最適化学習を担えば、短期間で教育水準を引き上げる効果が期待できそうだ。また、教育データを蓄積し改善を重ねる循環が生まれれば、持続的な改革にもつながると考えられる。
一方で、AIの出力内容の正確性や価値観の偏りは無視できない。Grokは過去に歴史認識を巡る不適切な投稿が指摘されており、誤情報が教育現場で用いられれば影響は深刻になる可能性がある。
さらに、政府と特定企業が学習データを一体的に管理する構図は、監視や思想統制への懸念も伴う。利便性と自由のバランスをどう取るかは、今後の運用次第と言える。
エルサルバドルの事例は、AIが教育インフラとなる未来を先取りする実験であり、その成否は国際社会にとっても重要な指標となりそうだ。
xAI and El Salvador Pioneer the World’s First Nationwide AI Education Program











