タイム誌がAI設計者を「今年の人」に選出　社会と産業を揺るがす技術の影響力

2025年12月11日、米誌タイムは「今年の人（Person of the Year）」に「AIの設計者たち」を選出したと発表した。

タイム誌がAI設計者を選出　生成AIの光と影を総括

タイムのサム・ジェイコブス編集長は、「今年、AIを想像し、設計し、構築した人々ほど大きな影響を与えた人物はいない」と言及した。

カバーストーリーには、AIブームの基盤となる半導体を手がけるエヌビディアのジェンスン・フアンCEOや、AI企業への大型投資を進めるソフトバンクグループの孫正義会長兼社長のインタビューが掲載された。

また、負の側面として、カリフォルニア州で自殺した16歳の少年のケースも取り上げられた。
彼の両親は、少年が生成AIとのやり取りを通じて精神的に追い込まれたと主張し、運営元のオープンAIを提訴した。

AIの恩恵とリスクが共存　社会制度と産業構造の再設計が進む

AI設計者が「今年の人」に選ばれたことは、技術がもはや単なる産業トレンドではなく、社会の前提そのものを組み替える力を持ち始めたことを象徴していると言える。
企業が基盤モデル（※）の活用を通じて、生産性向上や新規ビジネス創出を得られることは大きなメリットだろう。

一方で、依存や誤用をめぐるリスクも増大している。
特に個人の判断や感情に作用する生成AIでは、今回取り上げられた訴訟のような事例が増える可能性も否定できない。
プラットフォーム企業は安全性向上と透明性確保の両立を迫られ、各国政府も規制の枠組みを再設計する必要が出てくるだろう。AIが主導する社会において、責任の所在をどう定義するかは避けられない争点になると考えられる。

産業界では、AI開発と半導体供給の加速が今後のイノベーションを左右するだろう。
エヌビディアのような基盤インフラ企業は重要度を高め、国家レベルでの技術主導権争いも一段と激しくなる見通しだ。

タイムの選出は、2026年以降の世界がAIと共存するための基準づくりを本格化させる契機になると考えられる。

※基盤モデル：多様なデータを学習し、幅広いタスクに応用できる大規模AIモデルのこと。