富士フイルム、超音波内視鏡向けAIソフト発表 膵臓がん早期発見を支援

2025年12月11日、富士フイルムは膵臓がんの早期発見を支援する超音波内視鏡向けAIソフト「EW10-US01」を発表した。同ソフトは病変疑い領域をリアルタイムで検出する仕組みを備え、12月15日に発売される予定だ。
膵臓がん疑い領域をAIが即時検出 内視鏡診断の負荷を軽減へ
富士フイルムが発表した「EW10-US01」は、超音波内視鏡(EUS)の画像をAIで解析し、膵臓の存在が推定される領域と膵充実性病変(※)が疑われる領域を同時にマーキングする診断支援ソフトである。検出時には画面上の強調表示に加え、報知音で術者へ注意を促す仕組みを取り入れた。
本ソフトは機能拡張ユニット「EX-1」にインストールして利用する構成で、既存のSU-1やEG-740UTといった超音波内視鏡システムと組み合わせて運用する。
背景には、膵臓がんの早期発見が極めて難しいという医療現場の現実がある。日本では年間約4万人が膵臓がんで死亡し、5年相対生存率は8.5%と低い。一方で、腫瘍径1cm以下の段階で見つかった場合、生存率は80%超に跳ね上がるとされ、微小病変の検出力向上は喫緊の課題とされてきた。超音波内視鏡は微小ながんの検出に用いられてきたが、検査難度が高く技量によるばらつきが生じやすかった。
富士フイルムは既に「CAD EYE」シリーズを消化器領域で展開しており、今回の膵臓領域の対応によって内視鏡診断全体のワークフロー支援をさらに広げる狙いを示している。
※膵充実性病変:膵臓内にみられる腫瘍性の病変部位を指し、がんの可能性を含む領域の総称。
AIがもたらす標準化と精度向上 依存リスクや運用負荷にも配慮が必要
AIによるリアルタイム検出が加わることで、術者の熟練度に依存していたEUS検査の再現性が高まり、診断の標準化が進むことが期待できる。特に経験の浅い医師が多い医療機関では、AIが「見落としを減らすセカンドチェック」として機能し、検査精度の底上げに寄与するだろう。さらに、報知音や視覚的強調により注意喚起が促される点は、集中力の持続が求められる長時間検査において効果的だ。
一方で、AIによるマーキング結果を過度に信頼するリスクも存在する。AIが示す領域はあくまで補助であり、最終判断は医師が担う必要がある。また、画像品質が低い場合や機器の状態が最適でない場面では、検出精度が低下する可能性があり、運用側の環境整備も欠かせない。
今後は、CAD EYEシリーズ全体と連携した診断支援プラットフォームの拡大も予想される。
AIによる読み取り精度のさらなる向上に加え、検査プロセスの記録・共有を含めた総合的なワークフロー改善が進めば、膵臓がんの早期発見率向上に寄与する可能性が高く、がんが国民病として問題となる中で新たな解決策となり得るだろう。











