グーグルGeminiが米国防総省300万人を支援 AI主導の軍事体制が本格始動

2025年12月9日、米国防総省は約300万人の軍・文民職員向けにグーグルのAI「Gemini」政府版を導入すると発表した。ブルームバーグが報じたもので、米軍全体の情報分析と意思決定プロセスを大きく変える動きとなる。
国防総省がGeminiを採用 映像分析と指揮の高度化を狙う
米国防総省は新たなAI基盤「GenAI.mil」を開始し、その中心技術としてグーグル製AI「Gemini」政府版を採用した。
ヘグセス国防長官はXの動画で「米国の戦争は未来の時代に入った。その時代を担うのがAIだ」と強調し、映像や画像の高速分析を重視する姿勢を説明した。
Geminiは視覚認識やマルチモーダル解析に強みを持つため、戦場のリアルタイム把握を大幅に向上させるとみられる。
グーグル・クラウドは今年7月、国防総省にAI能力を提供する2億ドル規模の契約を発表していた。同社はすでに海軍、空軍、国防イノベーションユニット(DIU)にも技術を提供しており、防衛分野でのプレゼンスを広げてきた。
OpenAI、xAI、アンソロピックなど競合企業も同様の契約を受注しており、民間AI企業との連携は米軍の標準戦略になっている。
軍事AIがもたらす利点と懸念、そして加速する国際競争
Gemini導入の最大の利点は、情報処理と意思決定のスピードが飛躍的に向上する点だろう。映像解析の自動化が進めば、戦場データの確認作業に割かれていた人員を他任務へ再配置でき、組織全体の効率が高まると考えられる。
事務作業や文書生成がAIに移行すれば、職員の業務負荷も軽減される可能性がある。
一方で、軍事AIには誤判定のリスクが常につきまとう。解析結果が誤れば作戦判断を誤導し、現場に深刻な影響を及ぼす恐れがある。また、アルゴリズムの不透明性や民間企業への依存度の高さは、安全保障上の課題として残りそうだ。
今回、米国が軍事AIの活用を加速させることで、他国も追随する動きが強まる可能性が高い。AI主導の戦争環境が現実味を帯びる中、各国が技術優位を競う「AI版軍拡競争」に発展する懸念もある。特に、米中の技術対立が激化している現状では、AIの軍事利用が地域安全保障に新たな緊張をもたらすことは避けられないだろう。
今後の焦点は、Geminiがどこまで作戦領域に統合されるか、またどの範囲まで自律判断を許容するかという点に移ると予測できる。
軍事AIが標準インフラとなる未来において、その運用ルールと透明性の確保が国際的課題として浮上するはずだ。











