マイクロソフトがインドに175億ドル投資 AI主導権を狙う巨額戦略の行方

2025年12月9日、米マイクロソフトはインドのAIおよびクラウド分野に4年間で175億ドルを投じると発表した。モディ政権のAI戦略と歩調を合わせ、インドを新たな技術拠点として強化する動きが鮮明になった。
インドへ175億ドル投入、AIとクラウド基盤を一体強化
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは9日、ニューデリーでモディ首相と会談し、同社がインドに175億ドルを投資する計画を明らかにした。
投資の柱は「規模」「スキル」「主権」の三つであり、インド政府が掲げるAIイノベーションの拡大方針と合致するとされる。
ナデラ氏はXで「当社としてはアジアで過去最大の投資であり、インドが掲げるAIファーストの未来に必要なインフラ、スキル、主権能力を構築する」と投稿し、AI向けインフラ、人材育成、データ主権を重視する姿勢を示した。
人口14億5000万人を抱えるインドは、AI人材とデータ供給の両面で存在感を高めている。タタ・コンサルタンシー・サービシズやインフォシスなど大手IT企業が拠点を置き、数百万人規模のエンジニアを抱える点は米大手を惹きつける要因になっている。
実際に、アンソロピックのダリオ・アモデイ氏が10月に現地を訪問したほか、エヌビディアのジェンスン・フアン氏、ディープマインドのデミス・ハサビス氏らが相次ぎ訪問を予定している。
今回の投資では、ハイデラバードで整備中の大規模データセンターが優先事業に位置付けられている。2026年半ばに稼働予定で、インド最大のハイパースケール(※)拠点となる見通しだ。
マイクロソフトはこれまでもポルトガルやUAE、英国などで大規模投資を続けており、今回の決定はその延長線上にあると思われる。
※ハイパースケール:大量のデータ処理を前提に設計された大規模データセンターの構築手法。複数サーバーを並列的に増設し、柔軟にスケールアウトする構造を指す。
AI覇権の新軸としてのインド 加速する投資競争の光と影
今回の投資はマイクロソフトにとって、巨大市場の主導権確保につながる道筋となりそうだ。
一方で、インドがAI開発の中核として台頭することで、国際競争はさらに激化するだろう。
インドへの投資でのメリットの一つは、同国内のAI利活用が進み、製造、医療、金融などの産業構造が高度化する可能性がある点だろう。国内スタートアップが外資の支援を受けて成長し、エコシステム全体が加速する展開が期待される。
しかし、巨額投資が特定企業に集中することで、デジタル格差が拡大する懸念は残る。またAI向けデータセンターの拡張に伴い、電力需要の急増や環境負荷の上昇が課題として浮上する可能性もある。データ主権をめぐる国際協調と規制の両立も避けて通れない論点だ。
将来的には、インドが独自のAI標準を形成し、世界市場に影響力を持つシナリオも想定できる。
米大手が投資を積み上げるなか、欧州、中国勢もインド市場への接近を強めるとみられ、同国がAI覇権争いの新たな軸となる局面が近づいていると言える。
Microsoft invests US$17.5 billion in India to drive AI diffusion at population scale











