OpenAIがChatGPT改良へ総動員 競合激化でアルトマンCEOが「非常事態」宣言

2025年12月1日、米OpenAIのサム・アルトマンCEOが社内メモで「コードレッド(非常事態)」を宣言し、ChatGPTの改良を最優先に据える方針を示したと複数の米メディアが報じた。自律型AIや広告などの開発は後回しとなり、組織全体のリソース配分が大きく変わる見通しだ。
OpenAI、ChatGPT改良のため他プロジェクトを一時減速へ
複数の関係者によれば、アルトマン氏は1日付の社内メモで「総動員」を指示し、ChatGPTの体験向上を最優先の目標に掲げたという。背景には、AI開発競争がかつてない速度で加速し、OpenAIの収益基盤に影響が及ぶ可能性があると同氏が懸念した事情があるとされる。
実際、米テックメディアのジ・インフォメーションは、同メモに基づき、自律型AIエージェント(※)や広告、ショッピング関連の開発を一時的に減速させる方針が示されたと報道した。
一方、WSJは、アルトマン氏が担当責任者との毎日の電話会議を計画し、必要に応じてチーム異動も奨励していると伝えた。ChatGPT責任者のニック・ターリー氏もX上で、直感的で個人に寄り添うサービスを構築する姿勢を強調している。
同社の発表では、ChatGPTの週間利用者数は8億人に達したという。
一方、競合のグーグルは最新モデル「Gemini 3」を発表し、コーディングや推論能力を大幅に強化。
アンソロピックも企業向け機能を強化した新モデルを投入し、競争環境は一段と厳しさを増している。
※自律型AIエージェント:ユーザーの指示を超えて自らタスクを判断・実行するAIシステムの総称。ビジネス業務の自動化や情報検索で活用が進む。
競争激化で浮上する戦略転換 集中投下の成果とリスクを読む
今回の決断は、短期的には開発効率を高め、ChatGPTの競争力回復につながる可能性がある。特に、ユーザー体験の改善や推論性能の向上は、法人利用の拡大や収益性の向上に直結しやすい。プロダクトを核に据える戦略は、成長フェーズの企業として合理的だと言える。
ただし、副作用も無視できない。他プロジェクトの減速は、広告やエージェント領域での優位性構築を遅らせる懸念がある。これらは長期的な収益源として期待されている分野であり、競合が先行する余地を与える可能性がある。
社内リソースの再編については、OpenAIの組織体制に柔軟性が求められることになりそうだ。短期的な異動が増えれば、専門性の継続性が損なわれ、社員の負荷も必然的に高まるはずだ。
競争が激しい環境下では、短期強化と長期投資のバランスが重要となるだろう。
今後は、ChatGPTの改良速度が、企業向けAI市場のシェア争いを左右する可能性がある。
大規模モデルの刷新周期が短縮される中、どれほど迅速に成果を形にできるかがOpenAIの次の勝負どころになるだろう。
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