中国DeepSeekが次世代AIに布石 推論統合モデルV3.2で米勢に迫る

2025年12月1日、中国AIスタートアップDeepSeekが実験的AIモデルの新バージョン「DeepSeek-V3.2」など2種を発表した。推論統合と自律性強化を掲げ、米OpenAIとの技術競争が再び加速するとみられる。
DeepSeek、V3.2で推論とツール操作を統合した新版を公開
DeepSeekは9月に公開した実験モデル「DeepSeek-V3.2-Exp」を改良し、正式名に近い「DeepSeek-V3.2」へと刷新した。今回のモデルは、推論の深度を高めつつ、状況に応じて外部ツールを自律的に利用する仕組みを備えたと説明されている。
同社は、新版が複数の推論ベンチマークでOpenAIの主力モデルGPT-5に匹敵する性能を示したとし、中国発のオープンソース系モデルが国際競争力を維持している可能性を示唆した。
背景には、DeepSeekが今年1月に発表した低コスト・高性能モデルが技術業界の注目を集めた経緯がある。今回のV3.2はその延長線上に位置づけられ、同社が次世代AIの基盤づくりの一歩と説明している。
本モデルでは検索エンジン、計算、コード実行といった多様なツールを思考プロセスと統合し、推論モードと非推論モードの双方で活用できる点も特徴だ。
同社はX(旧ツイッター)で「思考プロセスをツール使用に直接統合した我々初のモデル」と強調した。
次世代AI競争は新局面へ 進む高度化と増すリスク
V3.2が示す推論統合型の設計は、業務効率化や意思決定支援の高度化に寄与すると見られる。特に、検索や計算を一体化して扱えることで、企業のデータ分析やソフトウェア開発の現場では作業負担を減少させる効果が見込まれる。
一方で、外部ツールに依存する範囲が拡大するほど、誤判断の連鎖や意図しない動作が起こるリスクも増すため、安全性評価の重要度は高まるだろう。
中国モデルが性能面でOpen AIをはじめとした米国勢に迫れば、価格競争が激化し、AI利用コストはさらに低下する可能性がある。これはWeb3やAI領域のスタートアップにとって追い風になるが、国際的な技術基準の不統一によって、企業がどのモデルを採用すべきか判断しにくくなる側面も否めない。
米中の技術覇権争いが続く中、AIガバナンスの枠組みが整わなければ、市場の不透明感はむしろ増すと指摘できる。
今後は、DeepSeekがV3.2を商用モデルにどう落とし込むかが焦点になるだろう。
推論統合型AIが実際のビジネス現場でどこまで信頼性を確保できるかが、次世代AI競争のバランスを左右すると言える。
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