マイクロンが広島でAI半導体を増産へ 1.5兆円投資でHBM供給網を強化

2025年11月29日、「米マイクロン・テクノロジーが広島工場にAI向け次世代メモリーの新棟を建設する」と日経新聞電子版が報じた。2026年に着工し、28年ごろにHBM量産を開始する計画である。
広島で次世代HBMを量産へ マイクロンが1.5兆円を投じる大型計画
日経新聞によると、米メモリー大手マイクロンは広島県東広島市の既存工場に新製造棟を建設し、AI処理に不可欠な広帯域メモリー(HBM)(※)の次世代品を量産する方針だ。2026年5月に着工し、28年ごろの出荷開始を想定している。投資額は1兆5000億円にのぼり、経済産業省は最大5000億円を補助する見通しである。
同社はコメントを控えているが、広島工場は2013年に買収したエルピーダメモリ由来の重要拠点である。
世界では、デルやHPなどの大手テクノロジー企業が、半導体メモリーの供給逼迫に警鐘を鳴らしている。
デルのジェフ・クラークCOOは25日の説明会で、主要メモリーが「かつてないコスト上昇に見舞われている」と指摘した。
こうした状況下でのマイクロンの大型投資は、需給逼迫を背景とした戦略的な動きと言える。
※HBM(広帯域メモリー):複数のDRAMチップを積層し、超高速かつ低消費電力でデータ転送を行う次世代メモリー。生成AIや高性能GPUの性能を左右する重要技術。
HBM供給拡大の恩恵と課題 AI需要の加速が左右する市場の行方
今回の計画は、AIサーバーや生成AI向けGPUの需要が世界的に膨らむ中、日本が先端メモリー供給網の一角を担うという意味で大きなメリットをもたらすだろう。
HBMの国内生産能力が強化されれば、企業や研究機関の調達リスクを下げる効果も期待できる。また、巨額投資が地域経済や雇用を押し上げる可能性もありそうだ。
一方で、リスクも無視できない。
HBMは高度な製造技術を要するため、設備投資の回収には時間がかかる可能性が高い。AI需要の伸びが想定より鈍化すれば、設備稼働率の低下が企業収益を圧迫するだろう。
また、国が手厚い補助金で複数企業を支援する構図は、中長期的に財政負担が積み上がる懸念もある。
そうした状況のなかで日本がどの領域で優位性を築くのか、戦略の明確化が求められる局面に入ったと言える。
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