アリババが消費者向けAIを全面投入 新アプリ「千問」で生活動線を再設計へ

2025年11月17日、中国アリババグループが自社LLM「通義千問(Qwen)」を搭載したAIアシスタントアプリ「千問(Qianwen)」のパブリックベータ版を公開した。対話、生成、解析を統合した総合型AIで、ChatGPTと競合する本格的な一般市場参入となる。
アリババ、AIアプリ「千問」を公開し生活サービス統合を加速
アリババは11月17日、独自LLM「通義千問(Qwen)」を基盤とするAIアシスタントアプリ「千問」を一般向けに公開し、消費者向けAI領域での存在感を急速に強めつつある。
これまで同社はアリババクラウドを通じた法人向けAPI提供を中心としてきたが、モデル性能の向上と国際的な評価を背景に、個人向けアプリ市場への本格参入を決断したと考えられる。
千問は質問応答だけでなく、文章生成、画像解析などChatGPTと競合できる機能を網羅しており、アリババはこれを日常の幅広いタスクを担う「AI生活プラットフォーム」と位置付けている。
アプリ公開の背景には、アリババが今年2月に表明したAIインフラへの3年間・3800億中国元規模の大型投資がある。
今後は地図、フードデリバリー、チケット予約、学習支援、EC、健康管理などの生活サービスとの連携を段階的に拡大する計画で、統合の中心には同社の基幹EC事業が据えられる。
特にTmallやTaobaoでは、エージェント型AIがユーザーの「こうしたい」という自然言語指示から商品検索、比較、注文手続きまでを自動で完了させる機能を数カ月以内に実装する予定である。これにより、EC体験はこれまでの検索依存型から、タスク委任型へと移行していく可能性がある。
生活インフラ化の明暗 利便性向上の一方で依存と統合リスクも
千問の普及は、中国のデジタル生活の基盤に大きな変化をもたらすと予測できる。
最も顕著なのは、EC行動の自動化による効率向上だろう。ユーザーは検索条件を細かく設定する必要がなくなり、AIが代行する買い物プロセスにより時間と認知負荷の削減が期待できる。
生活系アプリを横断して利用できるようになれば、移動手段の手配や食事の注文、日用品の購入が一つのAI体験に統合され、利便性は飛躍的に高まりそうだ。
しかし、利便性の裏側には依存リスクも存在する。
購買判断や生活タスクの多くをAIに委ねるほど、推薦ロジックの透明性や選択の偏りに利用者が気づきにくくなる可能性がある。サービス統合が進むほどデータはアリババに集中するため、プライバシーやデータ管理の精度がこれまで以上に問われる場面も増えるだろう。
とはいえ、ユーザーの体験価値と安全性の両立が実現すれば、AIアシスタントが生活インフラとして定着する未来も十分にあり得るだろう。
関連記事:
アリババと百度、自社製チップでAI学習を開始 NVIDIA依存脱却に向けた動き












