電通デジタルがAgentforceで企業マーケ刷新 統合AIパッケージを正式提供

2025年11月19日、国内の電通デジタルはSalesforceの自律型AI「Agentforce」を活用した新パッケージを発表した。企業のマーケティング活動を一貫して支援する構成で、データ統合から施策実行、効果検証までを包括的に最適化する点が特徴となる。
Agentforceを軸に企画・実行・検証を統合する新パッケージ
電通デジタルは19日、SalesforceのAIエージェントであるAgentforceを活用した「Dentsu Digital Agentic Marketing Package」を提供開始すると明らかにした。
同パッケージは、企業のマーケティング業務を一連の流れとして支援する目的で設計され、データ解析から施策実装までを統合的に扱える点が最大の特徴になる。
基盤となるのは、Salesforce Data 360(※)に蓄積された顧客情報や行動履歴である。Agentforceはこれらを学習し、施策目的に寄与しやすいターゲット層の抽出、コンバージョンの高いコンテンツ、ユーザーが離脱しやすいポイントの特定など、KPI達成に必要な要素を提示する仕組みだ。
同社はこのプロセスによって、マーケティング担当者が定量的な根拠をもとに企画立案をスピーディに進められると説明している。
施策実行では、Einstein StudioでのAIモデル構築と、Segment機能によるセグメント生成を組み合わせ、リアルタイムでパーソナライズされたメッセージ配信を行える。
また、効果測定にはTableauが用いられ、実行シナリオや媒体別の成果を可視化することで、継続的な施策最適化につなげる構成となる。
加えて、企画・検討からPoC、本番実装、改善・拡張までを通して支援できる点が強調されており、迅速に変化する市場環境での対応力向上を目指す姿勢がうかがえる。
※Salesforce Data 360:Salesforceが提供する顧客データ統合基盤。分散した情報を一元管理し、統一IDで横断的に活用する仕組み。
自動化で高まる効率と競争力 精度向上と依存リスクの両面をどう見るか
Agentforceを核とした統合パッケージの提供は、企業がマーケティング活動をどこまで自動化できるかを示す指標になるだろう。特に、ターゲット抽出から施策実行、効果検証までを一気通貫で進められる環境は、従来の属人的な企画プロセスを刷新し、組織全体の意思決定速度を高める可能性がある。
加えて、データ統合基盤とAI推論が連動することで、顧客ごとに最適な体験を届ける精度が向上し、競争優位性の確立にも寄与しうると考えられる。
一方で、自動化された分析に依存することによるリスクも無視できない。AIが学習するデータの偏りが施策の方向性に影響を与える懸念は残り、短期成果に引き寄せられた判断が中長期のブランド価値と矛盾を生む可能性もある。
迅速な改善サイクルを前提とする本パッケージは、変化の激しい広告・CRM市場において、施策の精度と速度を両立させる一手となり得るのは確かだ。
今後は、同様のエージェント活用が外部データや他領域のオートメーションとどこまで連動するかが焦点になり、企業のマーケティング基盤のあり方そのものが再定義されていくと考えられる。
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