韓国がUAEの巨大AIデータセンターに正式参画 中東主導の次世代インフラ戦略が転換点に

2025年11月18日、韓国政府はアラブ首長国連邦(UAE)が推進するAI向け超大規模データセンター計画「スターゲートUAE」への参画を発表した。ロイターが報じたもので、李在明大統領がAI分野を成長戦略の最優先に据える姿勢を鮮明にした国際協力だ。
韓国、UAEの巨大AI基盤構築で戦略的参画を拡大
韓国は18日、UAEとの戦略的枠組み協定を締結し、同国が主導する「スターゲートUAE」プロジェクトに正式参加した。
計画は米国外で世界最大級となるAI向けデータセンター群の構築を目指し、初期フェーズとして1ギガワット規模のセンター建設が始動する。主導するのはUAE国営AI企業G42で、オープンAI、オラクル、エヌビディア、シスコ、日本のソフトバンクグループなどが協力企業として名を連ねる。
韓国側の産業進出も明確で、サムスン電子とSKハイニックスは今年10月、同プロジェクト向け半導体供給に関する基本合意書を締結していた。これにより、韓国の半導体大手が中東の次世代AIインフラの根幹を担う見通しが強まったと言える。
李在明政権が今回の協力を重視する背景には、トランプ米大統領による対韓関税引き上げで韓国の国内経済の先行きに不透明感が漂う中、AIと半導体を核とした新たな成長軸を構築したい意図がある。
李氏は6月の就任以来、AI投資を国家戦略の最上位に位置付けてきた。
今回の協定により、両国は投資、インフラ、供給網、研究開発などの領域で協力を深める枠組みを確立した。
韓国にとってはAI主導の国際産業連携における影響力を高める契機となり、UAE側にとっても信頼性の高い半導体供給先を確保し、巨大プロジェクトの実行力を高める効果があるとみられる。
韓国産業の成長加速か 競争激化や地政学リスクも残る
スターゲートUAEへの参画は、韓国企業に複数の追い風をもたらすと考えられる。
まず、サムスン電子やSKハイニックスは巨大データセンター向けの高性能半導体需要を継続的に取り込む可能性があり、収益安定性の向上が期待される。
さらに、G42やオープンAIと連携することで、次世代AIモデルやデータ処理プラットフォームへの関与が広がり、新規ビジネス創出の機会を得やすくなるだろう。
しかし、リスクも明確だ。中東ではサウジアラビアのネオム計画など、同規模のAI・デジタルインフラ投資が競合として台頭しており、巨大案件の獲得を巡る国際競争はより激しくなると予測される。
また、米国の対外技術規制の影響を受けやすい半導体分野では、供給制約がプロジェクト全体に波及するリスクも無視できない。
それでも、中東への産業シフトは韓国にとって長期的にプラスに働く可能性が高いと言える。エネルギー調達や投資協力が同時に進むことで、韓国はAIサプライチェーンと地政学的安全保障の双方において選択肢を拡大することができるだろう。
今後は、データセンター運営に不可欠な冷却技術や省電力設計などの周辺産業がどこまで育つかが焦点になるとみられる。
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