MSとエヌビディアがアンソロピックに2兆円超 生成AI競争の主導権争いが加速

2025年11月18日、米マイクロソフト(MS)と米エヌビディアは、生成AI「Claude(クロード)」を開発するアンソロピックに最大150億ドルを出資すると発表した。米国で進むAI開発競争の次段階を象徴する動きであり、業界勢力図を左右する可能性がある。
MSとエヌビディア、アンソロピックに150億ドル出資発表
MSとエヌビディアは18日、アンソロピックへの共同出資計画を明らかにした。出資額はMSが最大50億ドル、エヌビディアが最大100億ドルとされ、合計で2兆円規模に達する。
アンソロピックは、オープンAIの運営方針を巡る対立後に独立した元幹部らが2021年に設立した企業であり、「責任あるAI利用」を理念に掲げるスタートアップとして注目されてきた。
今回の資金調達に合わせ、アンソロピックはMSのクラウド基盤「Azure(アジュール)(※)」を300億ドル分購入する契約を結び、インフラ面の強化を図るという。さらに、エヌビディアの先端AI半導体を積極的に採用する構えだ。
こうした大型契約は、生成AI領域での競争強化が背景にあるとみられ、両社がアンソロピックを戦略的に位置づけていることを示していると考えられる。
アンソロピックにはすでにアマゾン・コムも出資しており、複数の大手が支援する体制が鮮明になった。生成AI市場ではオープンAIが先行してきたが、アンソロピックが「第二の柱」として育つ可能性が高まっている。
出資拡大は、米国のAI開発競争が一段と過熱する転換点になると言える。
※Azure(アジュール):MSが提供するクラウド基盤。大規模AIの学習・推論環境を構築する際に利用される。
巨額投資がもたらす産業構造の変化と競争の行方
今回の大型出資は、生成AI市場の再編が進む兆候と評価できる。
まずメリットとして、アンソロピックが安全性や透明性を強調した開発方針を維持しながら規模を拡大できる点がある。企業向けAIの導入ではガバナンスが重視されるため、同社の姿勢は市場競争力を高める要素になりうる。
エヌビディアにとっても利点は大きい。
同社GPUの採用が拡大すれば、学習や推論の需要が継続的に増加し、中長期の収益基盤が強化される。
一方で、アンソロピックが巨額のクラウド利用契約を負うことにより、収益性の確保やコスト最適化が課題として浮上する可能性も否定できない。投資規模が急激に膨らむことで、開発競争の過熱やモデル更新サイクルの短期化が生じ、業界全体のバランス面でのリスクも増すと考えられる。
将来的には、複数の高度AIモデルが並立し、利用側が用途に応じて選択する構図がより鮮明になるだろう。アンソロピックが安全性を強みに企業領域で存在感を高める一方、MSやエヌビディアがエコシステムの主導権を握る構造が固まる可能性がある。
巨額投資が示す将来へのベクトルは、生成AIが単なる技術競争を超え、産業全体の基盤を左右する段階に入ったという事実であると言えるだろう。
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