PHP研究所がAI偽造動画を警告 松下幸之助氏の名誉侵害に対策強化

2025年11月11日、京都のPHP研究所は、創設者である故・松下幸之助氏の画像や音声をAIで不正合成した偽造動画が拡散していることに対する声明を発表した。国内で深刻化するAI偽造問題への具体的な対応策を示した形だ。
PHP研究所が偽造動画の削除申立てと監視を本格化
PHP研究所は、松下幸之助氏を模した偽造動画がインターネット上で確認され、同氏の言動や人格を歪める内容が含まれるケースがあると述べた。
同社の発表によると、これらの動画は遺族の感情を害するだけでなく、違法な可能性が高いと指摘している。
同研究所は、ファンや利用者が誤った情報に触れることを避けるためにも、動画の閲覧や共有を控えるよう呼びかけた。
研究所は、今後も継続的にネット上の状況を監視し、確認した動画については調査と記録を行った上で、関係プラットフォームへの削除申立てや法的措置を検討すると表明した。
さらに、パナソニックや関連団体にも注意喚起を依頼し、連携して対応を進める方針を示した。
利用者に対しては、SNSで偽造動画を見かけた場合、「不正合成(※)」や「なりすまし」の通報フォームを通じて報告してほしいと案内している。
また、URLやアカウント名を専用フォームから送れば、同社は可能な範囲で情報収集・対応を行うとしている。
※不正合成(deepfake):AI技術を用いて人物の顔や声を精密に偽造する行為。画像・音声データを大量に学習させることで、本人そっくりの動画や音声を生成する技術を指す。
偽造動画対策は拡大へ 信頼維持と規制強化が次の焦点
今回の対応は、企業や団体がAI偽造リスクを前提とした情報管理体制へ移行しつつあることを示すものだと考えられる。
早期の警鐘によって誤情報の拡散を抑え、ブランドや著名人の評価を守る効果が期待できる。また、プラットフォーム側の削除手続きが進めば、悪質な偽造コンテンツを可視化しにくくなる環境も整いそうだ。
AI生成技術は一般ユーザーでも扱える水準へ低価格化しているため、偽造動画の発生源を根本的に断つことは難しい。さらに、偽造物が一度拡散されると、完全な回収は事実上不可能となり、偽情報が半永久的に残る恐れがある。
松下氏のように歴史的評価を伴う人物では、その影響は教育現場やビジネス領域にまで及ぶ可能性がある。
今後偽造リスクの観点においては、国内で進むAI偽造対策の法整備が鍵を握るだろう。
著名人の権利保護を強化し、偽造コンテンツへの罰則を整備する動きが加速すれば、抑止効果は高まると考えられる。
一方で、技術開発の自由度とのバランスをどう取るかは依然として課題であり、社会全体で議論を深める必要があると言える。
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