高校数学がAI時代向けに再編へ 行列・確率・統計を横断的に学ぶ新体系

2025年11月14日、文部科学省は中央教育審議会の作業部会で、高校数学の科目構成をAI時代に対応させる改訂方針を示した。行列や微分・積分などを横断的に学べるよう再編し、日本国内でのデータサイエンス人材の基盤強化を図る動きである。
AI関連単元をまとめて学ぶ新構成案 行列・確率・統計を必修化か
文部科学省が示した新たな構成案では、AIや数理科学の理解に不可欠とされる行列(※)、確率、統計、微分・積分といった単元をまとめて学べる体系への再編が柱となる。
現在の学習指導要領ではこれらの分野が数学A、B、Cなどに分散しており、生徒が関連知識を一貫して習得しづらい状況が続いている。
さらに、数学I以外の科目は選択式で、数学Bの履修率は45%、数学Cは34%にとどまる。
こうした課題を踏まえ、文科省はAIやデータサイエンス社会で必要とされる基礎数学をより多くの生徒が学べるよう選択科目の再編に着手する。
※行列:複数の数値を縦横に並べることで計算や変換を表現する数学構造。AIの画像処理や統計解析の基盤となる。
数理力の底上げに期待も負担増の懸念 学校間格差が焦点に
AIに直結する数学を横断的に学べる構成になることで、文理を問わずデータサイエンスの基礎素養を身につけやすくなる点は大きな利点と言える。
特に行列や統計は機械学習モデルやデータ解析の根幹であるため、高校段階で体系立てて学ぶことで、大学・企業での応用にスムーズにつながると考えられる。AI活用が一般化する社会状況を踏まえると、基礎数学の標準装備化は避けて通れない流れと言える。
一方で、学習負担の増加や理解度の格差が広がるリスクも無視できない。
これまで数学BやCを選ばなかった層に高度な単元が加わる場合、追加の補習体制やサポートが十分でなければ定着度に差が生じる恐れがある。また、教員不足やICT環境の差が大きい地域では、授業の質に偏りが生まれる可能性もある。
将来的には、新体系に合わせた大学入試の再設計や産業界との連携が重要になるだろう。
AI社会で求められる数理力を幅広く育むためには、科目再編だけでなく、教育現場を支える周辺施策が鍵を握ると言える。
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