インフィニオン、AIチップ売上見通し上方修正 自動車事業減速で転換期か

2025年11月12日、ドイツの半導体大手インフィニオンはAIデータセンター向けチップの通期売上見通しを上方修正したと発表した。
世界的なAIインフラ投資の急拡大が追い風となる一方、自動車・産業分野では在庫調整の長期化が懸念され、同社の成長軸が明確に変わりつつあることが浮き彫りになった。
AI需要が売上成長を牽引する一方で自動車と産業用は鈍化
インフィニオンは、2026年度のAIデータセンター(※)向けチップ売上目標を従来比50%増となる15億ユーロに引き上げた。
ハネベックCEOは「AIインフラへの世界的な投資は急速に増え続けている。この10年間の終わりまでに、インフィニオンの対応可能な市場は80億─120億ユーロに達するだろう」と説明した。
高性能処理需要の継続的な伸びが明確になり、同社の成長ドライバーもAI領域にシフトしているようだ。
一方同社は、自動車と産業部門の成長の勢いは緩やかであると説明。企業の在庫調整は長期化が見込まれ、25年末には在庫が「持続不可能な水準」に落ち込むリスクがあると指摘している。
今四半期の売上は前四半期比9%減の36億ユーロになり、例年より大きな落ち込みとなる見通しだという。
総売上高は為替の逆風が残るものの、25年度の147億ユーロから26年度は小幅な増加を見込む。JPモルガンのアナリストはガイダンスを「不明瞭ながら悲観的ではない」と評価した。
※AIデータセンター:AIモデルの学習や推論を行うための大規模計算施設。GPUや専用半導体を多数搭載し、高度な並列処理を実現する。
AI集中のメリットと在庫調整リスク 26年度は二極化が鮮明になる可能性
インフィニオンがAI分野の見通しを強気に転じた背景には、高性能計算(HPC)とデータセンター投資の継続的な拡張を行いたい意図があると思われる。AIチップは高付加価値製品であるため、利益率向上や価格競争力の強化につながる可能性が高い。
同社が、欧州メーカーとしてAI市場で存在感を高めれば、域内の半導体供給網強化にも寄与するかもしれない。
しかし、自動車・産業分野の鈍化は中期的な重荷となりうる。
特に自動車向け半導体はEV需要の変調や過剰在庫の影響が続き、回復に時間を要する可能性がある。短期発注が常態化すれば、供給計画の精度が低下し、収益変動幅が広がるリスクも残る。
26年度は、AI需要の拡大が成長を牽引する一方で、従来の主力市場が調整局面に入る「二極化」が一段と鮮明になりそうだ。
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