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    AI偽装の警察官が1244万円を詐取 実在人物を模倣する手口が拡大

    2025年11月11日、三重県警四日市北署が、四日市市の40代男性が実在の警察幹部に酷似したAIを使ったとみられる映像にだまされ、現金1244万円を振り込んだと発表した。生成AIを悪用した深刻な詐欺の可能性があるとして捜査が進められている。

    目次

    AIで実在幹部になりすまし、高額送金を誘導した手口

    四日市北署によると、男性は10月30日、警察官を名乗る男から「あなたの銀行口座が詐欺に使われた」との電話を受けた。その後、刑事部長を名乗る別の男からLINEのビデオ通話に誘導され、公式捜査を装った説明を受けたという。

    映像に映る人物は、検索で確認した実在の元刑事部長の顔と極めて似ており、男性は身分を信じ込んだとみられる。

    通話の中で「あなたに逮捕状が出ている」と告げられ、検事を名乗る人物に複数回にわたり指定口座へ送金するよう指示を受け、男性は11月5日までに合計1244万円を振り込んだ。
    その後被害男性は不審点を感じて同署に相談し、詐欺被害が判明した。

    同署は、ビデオ通話に用いられた映像が生成AIによって実在の警察幹部を模倣した“偽装映像”である可能性が高いとみて捜査している。

    近年、顔や声をリアルタイムで合成する技術が一般に流通し、犯罪者が権威ある人物になりすますハードルは大きく下がった。

    AI偽装詐欺の常態化リスク 防御技術と制度整備が急務に

    今回の事件は、一般市民が“本物そっくりの相手”とビデオ通話をしてしまう時代に入りつつある現実を象徴する。
    生成AIの高度化により、権威ある人物の顔や声を短時間で複製できるため、詐欺グループにとって偽装はこれまでより容易になると言える。

    一方で、この技術は行政や企業による本人確認を強化する手段にも転用でき、AI解析による偽映像の検知が精度を高めれば、被害の抑止に寄与する可能性もある。

    しかし、攻撃側の技術進化が防御を上回りやすいという構造的課題は残る。
    金融機関は高額振込時のAI異常検知を強化し、通信事業者はビデオ通話の改変検出システムを導入するなど、複数のレイヤーでの対策が不可欠になるとみられる。
    制度面でも、偽映像を用いた詐欺の法的位置付けや罰則の明確化が進まなければ、犯罪者への抑止力は限定的になるだろう。

    個人ができる対策には限界があり、行政・民間・プラットフォームが連携して“なりすまし検証”の仕組みを標準化する動きが今後の焦点になると考えられる。

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