武田薬品、大阪工場で無菌室作業映像のAI解析を公開 作業品質安定化へ

2025年11月11日、武田薬品工業は大阪工場(大阪市淀川区)で、無菌室内作業をAIで解析する新システムを報道陣に公開した。同社はAIやデジタル技術の導入を進め、品質管理の高度化と生産現場の安全性向上を目指している。
大阪工場、AI解析で無菌室作業の効率と精度向上
大阪工場は大正4年に設立され、今年で創立110年を迎える国内初の製造拠点である。同社はこの歴史ある工場で、AIを活用した無菌室(※)作業解析の実証実験を開始した。
従来はベテラン担当者が監視映像を目視で確認していたが、複数作業員の同時監視は負担が大きく、効率化が課題となっていた。
導入されたシステムは、AIが監視映像を解析し、作業員の動作を「適切」「速すぎる」「静止状態」などに自動分類する。これにより、改善指導の精度向上や作業品質の安定化が期待される。また、VR(仮想現実)による無菌室再現で作業訓練を行い、教育効果の向上も狙う。
さらに同工場では、3Dプリンターを用いた備品製作やドローンによる高所点検など、先端技術を積極的に導入している。
この日開催された110年記念セレモニーには従業員200人以上が参加し、山田章弘工場長は「大阪工場を支えてきたのは最新設備や技術革新だけではなく、人がバトンをつなぎ発展を重ねてきた」と述べ、歴史と技術革新の両立を強調した。
※無菌室:微生物の混入を防ぐため、清浄度を管理した特殊な作業空間。医薬品製造や半導体製造などで用いられる。
AI活用による品質管理向上の期待と課題
武田薬品では、今回のAI解析の導入により無菌室作業の監視負担が軽減され、作業の均一化やミス低減が進むことが期待される。またVR訓練との組み合わせで新人教育の効率化も可能となり得るため、作業者のスキル標準化が進む点もメリットが大きいと言える。
一方、解析精度や誤検出への対応は課題となるだろう。AIだけに頼りすぎると人間の監督軽視につながるリスクが考えられる。
今後は、大阪工場での実証成果を国内外の拠点に展開し、デジタル技術を活用した「次世代型工場」の標準モデルを構築する動きが見込まれる。
適切なAI運用と人の判断の両立が、品質管理と安全性向上の鍵となるだろう。
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