日産、本社ビル売却益をAI投資へ 構造改革と成長基盤強化の一手

2025年11月6日、日産自動車は横浜本社で決算会見を行い、本社ビルを売却し得られる利益の一部をAIシステム構築やデジタル化投資に充てる方針を示した。エスピノーサ社長は「構造改革の重要な一歩」と強調した。
本社ビル売却で資産最適化、AI・デジタル投資を加速
日産自動車は、横浜市みなとみらい地区にある本社ビルを売却する方針を決定した。ただし、売却後も20年間の長期賃貸契約を締結し、現行の事業拠点を維持する。「従業員や事業運営への影響はない」と説明した。
今回の決定について、エスピノーサ社長は会見で「資産の最適化を進め、構造改革の成果を刈り取っていく重要な一歩だ」と語った。
売却益の一部はAIのシステム構築やデジタル化の投資に充てるとし、「イノベーション(技術革新)と会社の成長に向けた投資資金も確保する」と説明している。
今回の投資判断は、デジタル技術の強化を加速し、技術開発と経営効率の両面で競争力回復を図る狙いがあるとみられる。
AI投資は競争優位につながるか 成長機会とリスク
日産が売却益をAI投資に充てることは、中長期的には競争優位につながる可能性が高い。
自動車市場では、EVや車載ソフトウェア、自動運転といった領域が価値の中心へ移行しており、企業間競争は「開発スピード」と「データ活用力」が鍵となる。
AIによる設計工程の短縮や品質検証の高度化は、製品投入の迅速化につながり、収益構造の改善を後押しするだろう。
一方、AI投資には成果が出るまで時間を要すると考えられる。投資額が先行し、短期業績に即効性がない場合、株主や市場からの評価は分かれる可能性がある。
また、既存業務プロセスの見直しやデジタル人材の強化など、社内の構造変革も並行して求められるため、運用フェーズには組織的な摩擦が生じ得る。
それでも、物理資産をベースにした旧来の事業構造から、知識資産とデジタル技術を中心にした企業体質へ転換する動きは、産業全体の潮流と合致している。
横浜という拠点性を維持しながら、内部の競争力を刷新できるか。その成否が日産の次の10年を左右すると言える。











