AI半導体「ブラックウェル」 米財務長官が対中販売と規制見直しに言及

2025年11月4日、米財務長官ベセント氏が、エヌビディアのAI半導体「ブラックウェル」が将来、中国を含む海外市場に販売可能となる可能性に言及した。一方、ホワイトハウスは現時点での対中販売に否定的な姿勢を示し、政策判断を巡る立場の違いが浮き彫りになっている。
米財務長官、ブラックウェルの対中販売に前向きな見通し
ベセント米財務長官はCNBCのインタビューで、エヌビディアが開発したAI向け最先端半導体「ブラックウェル(※)」について、今後さらに高性能な製品が登場すれば、ブラックウェルが相対的に現行の最先端カテゴリから外れる可能性を示した。
「1年後、もしくは2年後になるかは分からないが、効率性の観点からブラックウェルが2─4段階下に位置付けられるようになる可能性もある」とし、「その段階になれば、(中国などへの)販売が可能になる」と述べた。
一方、ホワイトハウスは同日、現時点でブラックウェルの対中販売に関心がないと発表した。
エヌビディアの黄健倫(ジェンスン・フアン)CEOは、中国販売再開への期待を示しているが、最終判断はトランプ大統領に委ねられている。
ベセント氏は、対中貿易の関係性について「良好」だと指摘している。
また、G20サミットでトランプ大統領と中国の習近平国家主席が再び顔を合わせる可能性があるとも述べた。
※ブラックウェル:エヌビディアが開発するAI計算向けGPUアーキテクチャ。生成AIモデルの高速処理に利用される。
規制緩和の鍵は世代交代と外交環境 企業成長と安全保障の両立は可能か
ブラックウェルが輸出緩和の対象となるかどうかは、半導体技術の世代交代スピードに左右される。AI半導体は進化が早く、最先端とされる性能は数年で陳腐化しうる。
新世代の製品が標準化すれば、ブラックウェルは「安全保障上のリスクが低い旧世代品」と再定義される可能性がある。この場合、エヌビディアは巨大な中国市場を再び開拓でき、収益源の多様化が進むだろう。
一方、販売解禁は米中関係の緊張度にも依存する。対話が進めば技術輸出は外交カードとして調整余地を持つが、摩擦が再燃すれば規制はむしろ強化される恐れがある。
また、米国内ではAI技術の軍事転用に対する懸念も根強く、政治的判断は容易ではない。
中国への販売は、企業にとって市場拡大のメリットが大きい一方、米国国家としては安全保障と技術覇権維持のバランスをいかに保つかが課題となるだろう。
AI半導体は今後も米中競争の焦点であり、規制・解禁の波は継続的に揺れ動くと予測される。
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