鹿児島市電にAI運転支援システム 事故多発で全57両に導入へ

2025年10月27日、鹿児島市交通事業経営審議会は、市電で相次ぐ衝突事故を受け、2026年初頭にAIカメラを用いた運転支援システムを全57車両に導入すると報告した。
運転士の脇見や居眠りを察知し、警告を発することで衝突を未然に防ぐ。
市電事故の増加に対応し、AIが前方監視と注意喚起を担う
鹿児島市交通局は、2026年1〜3月にかけて市電全車両へAI運転支援システムを導入する。各車両に4台のAIカメラ(※)を設置し、前方を走る車両の位置を検知して距離が縮まった際に警告を発する仕組みである。
また、運転士の視線や表情を判定し、脇見や居眠りの兆候が検出された場合にもアラームが鳴る。システムは先行車両に接近した際、約15メートル手前で初回の警告を行い、3メートル以内に近づいた段階で再度通知する。
同局によると、市電では2025年4〜9月の半年間に重大事故3件、重大事故に至る可能性があったインシデント1件が発生したという。これは2023年度および2024年度の年間件数(各3件)を上回る水準であり、停止中の車両へ後続車両が追突するケースも確認されている。
市交通局の担当者は「システムを導入し、安全性の向上を図っていきたい」と述べ、安全運行体制の強化を明言した。
また、交通局は同審議会で2026年8月に市電運賃を「大人200円・小児100円」へ改定する案も示した。
※AIカメラ:画像解析により対象物や人の動作を認識し、異常検知や注意喚起を行うカメラシステム。自動運転分野で広く用いられる。
安全性向上の期待と運転士依存の緊張関係 導入後の実効性が問われるか
AI運転支援システムの導入は、市電の安全基盤を強化するうえで重要な施策といえる。
運転士の集中力が低下する状況でも、AIが監視と警告を補助することで事故発生率の低減が期待される。
一方で、注意喚起が自動化されることで、運転士がシステムに依存し注意を怠る「過信リスク」の懸念もある。
警告頻度が高ければ現場の負担となる可能性も残るため、導入後の運用調整は不可欠だろう。
また、合わせて発表された運賃改定が、今回の運転支援システム導入と関係があるのかについては、市民の関心を集めるとみられる。
費用対効果や透明性のある説明が求められるだろう。
市電という公共交通の現場でAIが実装されることは、地方都市におけるデジタル化の象徴的なケースとなるだろう。
今後は運用データが蓄積されることで、自動運転技術への応用や他都市への展開にもつながるかもしれない。
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