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    マイクロソフト、豪IRENと97億ドル規模のAI計算基盤契約 供給網拡張を加速

    2025年11月3日、米マイクロソフトは、オーストラリアのIRENと約97億ドル(約1兆5000億円)規模でAIクラウドの計算能力を購入する契約を結んだとブルームバーグが報じた。契約期間は5年間で、同社は米テキサス州に設置されたアクセラレーターシステムを利用できるようになる。

    目次

    マイクロソフト、IRENのAIクラウド計算能力を長期確保

    今回の契約により、マイクロソフトは契約金額の20%を前払いし、IRENの保有する計算能力を優先的に利用できる権利を得た。

    利用対象となるのは米テキサス州に構築されたアクセラレーターシステムで、エヌビディアの最新AI向けチップ「GB300」を基盤に設計されている。AI関連の処理に特化した構成とされる。

    IRENは同時に、デル・テクノロジーズから必要なチップや関連機器を58億ドルで購入する取り引きにも合意した。IRENのダニエル・ロバーツCEOは、契約が全面的に実施されれば年間約19億4000万ドルの収益が見込めると述べている。

    ただし、今回提供されるキャパシティーは同社全体の約10%にとどまる。

    ロバーツ氏はコメントで「当社はこれまでも、大手ハイパースケーラー(※)を適切なパートナー企業として考えてきた」と述べ、複数社との協議が継続中であることを明らかにした。
    AI需要の拡大が続く限り、クラウド基盤の供給市場は新たな連携関係を生み出し続ける可能性が高い。

    ※ハイパースケーラー:巨大なクラウド基盤を世界規模で運営し、大量の計算リソースを提供する企業。主にマイクロソフト、アマゾン、グーグルなどを指す。

    AI計算能力争奪が本格化 利点と依存リスクの狭間で

    今回の契約の大きなメリットは、マイクロソフトにとって計算能力を短期的に拡張できることにある。自社データセンターの増設には用地、電力供給、設備調達など多くの時間とコストがかかるが、外部パートナーとの契約により供給不足のリスクを緩和できる。
    また、AIモデルの高度化が進む中で、演算単価の最適化や処理能力の追加確保は競争上の優位性にもつながるだろう。

    IREN側にとっては、長期契約により収益予見性が高まり、研究開発・設備投資を計画的に進められる点が利点とみられる。
    一方で、市場環境の変動により計算リソースの需給が変わった場合、価格の柔軟な再設計が難しくなる可能性もある。
    また、マイクロソフトは供給元を分散させる戦略を取る傾向が強く、IRENが単独で中長期的な供給シェアを維持できるかは不透明だ。

    AI計算能力は今や「データ」「アルゴリズム」に並ぶ新たな競争資源となった。今後は大手クラウド事業者同士が供給網をどう再編し、サプライチェーンの冗長性をどこまで確保できるかが優位性を左右する局面に入るだろう。

    今回の契約は、その競争がすでに「投資規模」と「供給網の戦略性」で決まる段階に達していることを示している。

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