AI・半導体に官民連携枠組み 日本成長戦略会議を近く発足へ

2025年10月31日、城内実経済財政担当相は報道各社のインタビューで、AIや半導体など戦略分野における官民連携フレームを新設し、総合的な支援策を議論する「日本成長戦略会議」を近く発足させる方針を示した。国内産業の強靭化と成長力回復を狙う動きだ。
戦略産業への「危機管理投資」を中核とした成長基盤の再構築
城内氏は、日本経済が長期の低成長に直面している要因として「成長につながる投資不足」を指摘した。人手不足は女性・高齢者の労働参加で一定程度補われたものの、経済成長につながる投資は十分ではなかったと説明する。
この課題に対応するため、政府はAI、半導体、造船などを「戦略産業」と位置づけ、官と民が役割を分担しつつ資金・人材・技術を集中的に投じる枠組みを整備する。
特に、国際的な地政学リスクや供給網(サプライチェーン)の逼迫を念頭に「危機管理投資(※)」を重視している。国内に産業基盤を確保し、経済安全保障に資する製品・サービスを自国発で提供できる体制の構築が目的となる。
また、財政運営については「責任ある積極財政」を掲げ、財政規律を維持しつつ戦略的に財政出動を行うと述べた。
※危機管理投資(※):地政学リスクや供給網途絶に備え、国内に生産・技術基盤を維持するために行う長期的投資のこと。経済安全保障政策の一環。
成長加速への期待と、投資効果の可視化が問われる
官民連携枠組みの創設は、研究開発や設備投資の加速につながる可能性がある。
特にAI分野では計算資源や高度人材の確保に莫大な費用が必要であるため、政府主導の支援が企業側のリスク負担を軽減し、スタートアップから大企業まで参入しやすい環境を整える効果が期待できる。
一方で、リスクも無視できない。資金が既存産業の延命に流れ、革新を阻害する恐れがあるほか、補助金配分の透明性や成果指標の設定が不明瞭なままでは、国民の理解を得られないだろう。財政出動が増えれば、中長期的な財政健全性への懸念も残る。
今後の焦点は、成長戦略会議がどの産業・分野にどの程度の資源を割り当て、どの指標で成果を評価するかにありそうだ。
官民の知見を統合しつつ、実効性のある制度設計ができるかどうかが、日本経済の競争力回復に直結すると言える。
関連記事:
城内大臣、生成AI「Sora 2」の著作権懸念に言及 政府として「適切に対応」












