熊本大学、半導体企業と連携授業 AIカメラ活用で社会課題の解決目指す

2025年10月21日、熊本大学で半導体企業と連携した実践授業が行われ、学生がAI(人工知能)搭載の小型カメラを使い地域の社会課題解決に挑んだ。県内の半導体企業が開発した最新デバイスを用い、現場での応用を学ぶ試みである。
熊本大、AIカメラで社会実装を学ぶ実践授業を実施
熊本大学に昨年度新設された情報融合学環で、半導体企業と連携した課題解決型授業が開かれた。
対象は2年生の1期生66人で、AIカメラ(※)を活用した社会実装をテーマに実習を行った。
今回の授業に協力したのは、熊本県内に工場を持つ半導体企業。同社が開発した小型AIカメラを用い、学生たちは画像認識技術を活用して地域課題の解決策を考案した。
授業では、企業担当者による講義の後、学生がグループに分かれて実際にカメラを接続し、画像データを解析する体験を行った。
あるグループは、近年問題となっているクマによる人身被害の防止をテーマに、AIカメラでクマと人を識別し、接近時に警報を鳴らす仕組みを構築中だ。
別のグループは、横断歩道や駐車場での交通事故を減らすため、歩行者を検知して車の動作を制御するシステムを検討している。
学生の一人は「AIカメラはなかなか手にできないし、なかなか使えないからこういう機会があるのがうれしい」と語り、理論と実践を結びつけた学びの意義を実感していた。
授業はあと2回行われ、11月には各チームがAIカメラを活用した課題解決策をプレゼン形式で発表する予定である。
※AIカメラ:人工知能を搭載した小型カメラ。画像認識アルゴリズムにより、人や物体を自動識別・分析でき、防犯・交通・産業分野などでの応用が進む。
産学連携が育む実践知 地方発の人材育成モデルに期待
今回の授業は、地方大学と半導体企業の協働による実践的教育の好例といえる。学生が最先端技術を使って地域課題に挑むことで、研究と産業が地元で循環する仕組みを育てている点が大きな特徴だ。特に熊本は半導体産業の集積地として注目を集めており、こうした教育連携は地域経済の底上げにもつながる可能性がある。
一方で、課題も存在する。AIの社会実装には個人情報の扱いやデータ倫理など、技術以外の視点が欠かせない。学生がそのリスクを理解し、責任ある開発姿勢を身につけられるかが、教育の質を左右する要素となりそうだ。
産学連携による実践教育は、従来の座学中心の枠を超え、学生が自ら課題を発見し、解決策を設計する「創造的学び」へと進化している。熊本大学の取り組みにより、地方発の人材育成モデルとして全国の大学に波及する可能性もあるだろう。
次代を担う技術者が、地域の課題をテクノロジーで解く力を磨く場として注目される。











