マイクロソフト、Copilotでハーバード大と提携 医療AIの信頼性を強化

2025年10月8日、米ハーバード大学は医学部傘下のハーバード・ヘルス・パブリッシングがマイクロソフト(MS)とライセンス契約を締結したと発表した。
MSの生成AI「Copilot(コパイロット)」にハーバードの医療・健康データを活用し、健康分野の回答精度を高める狙いがある。
ハーバードの医療知見をCopilotに導入、AIの専門性を強化
今回の契約により、マイクロソフトはハーバード・ヘルス・パブリッシングが保有する病気予防や栄養、生活習慣改善などに関する大規模なコンシューマーヘルスデータを利用できるようになる。
MSはこの知見をCopilot(※)に統合することで、ユーザーが健康や疾患に関する質問を行った際に、信頼性の高い情報を返す仕組みを整える。
ロイターによると、ハーバードはMSとの提携を通じて生成AIの知見提供者としての地位を強化し、OpenAI依存を減らす方針を示した。
これまで同大学は一部研究でGPTシリーズを用いてきたが、今回はAI企業への“データ提供側”として関与する形になる。
MSにとっても、この提携は戦略的な意味を持つ。
CopilotはOpenAIの技術を主な土台としているが、医療や教育など専門性が求められる領域では独自データの確保が急務となっている。
特に米国では、AIによる医療情報の誤答が問題視されており、学術的な裏付けを持つ情報源を統合することで、企業としての信頼性向上を図る狙いがあるとみられる。
※Copilot:マイクロソフトが提供する生成AIアシスタント。文書作成、要約、分析、検索などを統合的に支援する機能を持つ。Microsoft 365などの製品群に搭載されている。
信頼性と競争力を両立できるか AI医療分野の主導権争いが加速
ハーバードとの提携は、マイクロソフトにとってCopilotの「信頼性向上」というメリットをもたらすと考えられる。
健康分野の質問は誤答が命に関わるケースもあるため、専門機関の知見を反映させることはブランド価値の維持に直結する可能性がある。
一方で、ハーバードが自らのデータを特定企業に提供することで、医療情報の独占化が進む懸念も指摘される。AI各社が独自の学術データを囲い込む構図が強まれば、情報の透明性や公平性が損なわれるリスクがある。
今後は、MSがどこまで倫理的・法的な基準を順守しながら、医療情報をAIに活用できるかが焦点になるだろう。
今回の提携が医療AIの品質を底上げする契機となるのか、それともデータ独占競争の火種となるのか、引き続き注視したい。