台湾AI企業が北九州に集結 高雄連携で産業誘致と技術革新を加速

2025年10月6日、台湾のスタートアップ企業や大学関係者が福岡県北九州市を訪れ、市内企業との交流を深めた。AIを活用した先端技術の連携や企業誘致を通じ、同市がAI企業誘致を進める動きが始まっている。
台湾AIスタートアップが北九州訪問 高雄との産業連携が本格始動
北九州市で10月6日、台湾のスタートアップ企業や大学関係者ら16人が参加するビジネス交流イベントが開かれた。
参加企業の中には、AIを活用した自動運転やヘルスケアといった先端技術の開発を手がける企業も含まれており、市内の中堅・中小企業との協業や共同研究の可能性について意見が交わされた。
北九州市は2025年7月、台湾南部の産業都市・高雄市と連携協定を締結した。
高雄は台湾有数の都市で、世界最大級の半導体後工程(※1)企業であるASE(※2)も本社を構える。
ASEはすでに北九州での事業展開を視野に土地購入の仮契約を結んでおり、今回の訪問は都市間連携をより実践的な段階へと押し上げるものとなった。
市の担当者は「イベントを通して市内の企業と台湾企業のマッチングや企業誘致を進めていきたい」と語っている。
※1 半導体後工程:ウエハー製造後に行われるパッケージング・検査など、最終製品化までの工程。
※2 ASE:Advanced Semiconductor Engineering。世界最大手の半導体後工程企業で、パッケージングやテスト工程を担う。
技術連携が生む新産業の可能性 成長の起爆剤となる一方で課題も
今回の台湾企業との交流は、北九州が「次世代産業の拠点都市」へと進化するための重要な一歩になるとみられる。AIを核とした技術連携は、製造、医療、モビリティなど既存産業への波及効果が大きく、新たなビジネスモデル創出や地域雇用の拡大につながる可能性がある。
特に自動運転や医療AIなどの分野では、台湾企業が持つ先端技術と日本の製造ノウハウが補完関係を築ける点が強みとなりそうだ。
一方で、課題も無視できない。
スタートアップとの協業には高い研究開発力やスピード感が求められ、地元企業がそのテンポに追随できないリスクがある。また、海外企業誘致にはインフラ整備や制度面での支援が不可欠であると考えられるため、自治体と国の連携も求められるだろう。さらに、国際競争の激化により、同様の企業誘致を狙う他都市との競争も想定される。
それでも、アジア屈指の技術都市・高雄との連携は、北九州にとって成長戦略の中核となるだろう。ASEをはじめとする有力企業が進出すれば、研究開発拠点やサプライチェーンが集積し、地域経済の構造転換が現実味を帯びる。
今後は自治体の支援策と企業戦略の融合が、産業誘致の成否を左右しそうだ。