米政府、メタの生成AI「ラマ」を承認へ 行政サービスへ活用拡大

2025年9月22日、米政府がメタ・プラットフォームズの生成AI「ラマ(Llama)」を連邦機関向け承認済みツールリストに追加する方針を固めた。
メタの「ラマ」、連邦政府の承認AIツールに追加へ
米政府は、メタ・プラットフォームズが開発した生成AI「ラマ(Llama)」の活用を、連邦機関向けの正式な調達リストに加える方向で調整に入った。
GSAの調達責任者ジョシュ・グルーエンバウム氏が明らかにしたもので、正式な承認は近日中に公表される見通しだ。
ラマはテキストや画像、音声、動画といった多様なデータを処理可能な大規模言語モデル(※)である。
米政府はここ数カ月で他社のAIシステムも承認しており、複数の民間モデルが政府のITインフラに組み込まれつつある。
GSAによれば、各社は政府調達向けに価格を大幅に引き下げ、さらに連邦のセキュリティ基準への準拠も約束している。
※大規模言語モデル:膨大なデータを学習し、人間の自然言語を理解・生成するAI技術。文章生成、要約、推論など幅広い用途で活用される。
行政DXに追い風 安全性・透明性には懸念も
「ラマ」の採用は、行政のデジタル変革(DX)を加速させる可能性がある。
政策文書の作成時間を短縮し、国民へのサービス対応を効率化するほか、複数機関のデータ統合や意思決定支援といった高度な業務領域への応用が期待できる。
一方で、懸念点も少なくない。
まず、生成AIの判断過程が「ブラックボックス化」しやすいという構造的課題がある。特に公共分野では、政策決定や行政判断の根拠が説明できなければ、透明性や民主的な統治への信頼が損なわれる恐れがある。
また、機密情報の取り扱いや外部モデルへの依存によるサイバーリスクも無視できないだろう。
さらに、複数のAIモデルが同時並行で運用されることにより、データ管理やガバナンスの複雑化が進む可能性もある。今後は、調達段階での評価基準の明確化や、導入後の監査体制の強化が不可欠となるだろう。
それでも、AIの進化が行政の構造自体を変える流れは不可逆となりそうだ。
今後数年で、政府と民間の協働モデルが新たな段階へと進化する可能性は高いと言える。