Rolling Stone発行元、グーグル提訴 AI要約でトラフィック減少主張

2025年9月13日、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、音楽誌「ローリング・ストーン」を発行するPenske Media(ペンスキーメディア、PM)が、米ワシントンの連邦地裁においてグーグルを提訴したことを報じた。AI要約機能による記事利用が違法だと訴えている。
AI要約でトラフィック数が減少したと主張 米PM社がグーグルを提訴
米国大手出版社Penske Media(PM)は、グーグル検索に導入されたAI要約機能(※)が自社の記事を不正に利用し、ウェブサイトの訪問者数減少を引き起こしていると訴えた。
対象となるのは、検索結果上部に表示されるAIが生成する概要文である。
訴状では、AI要約が同社のコンテンツを違法に使い、トラフィックを減少させたと指摘。恒久的な差し止め命令と、金額を定めない損害賠償を求めている。
大手メディア企業がAI利用に対し司法の場で異議を申し立てたのは初めてのケースとみられる。
これに対し、グーグルの広報担当者は「AIによる概要は多様なサイトにトラフィックを送っている。根拠のない主張には断固として対抗する」と反論した。
※AI要約:検索エンジンや生成AIがウェブ上の情報を収集し、自動的に短い要約文を生成して表示する機能。記事本文を開かずに概要を把握できるが、媒体の閲覧数減少を招く懸念がある。
AIと出版業界の共存に必要なルール形成
今回の提訴は、AIと出版業界の関係における転換点となりうる。
AI要約は読者にとって便利で情報アクセスを容易にするメリットがある一方、出版社にとっては収益源を直接脅かす構造的リスクを抱えることが改めて浮き彫りになった形だ。
今後は、利便性と権利保護の間で折り合いをつける枠組みが不可欠になるだろう。
短期的には、AI企業とメディアの間でライセンス契約や収益分配モデルを整備する動きが進む可能性がある。AIサービスの利用価値を維持しつつ、コンテンツ提供側への適正な対価が確保されれば、双方にとってバランスのいい解決策となるだろう。
しかし、合意形成が進まなければ訴訟が連鎖的に拡大し、AI活用と報道機関の関係は冷え込む恐れがある。さらに、司法判断がAI要約の合法性や権利処理の範囲をどう位置づけるかによって、世界の出版業界全体に波及することも予測される。
出版ビジネスが持続的に成立するか、それともAI時代に新たなルールを模索せざるを得ないのか。今回の裁判はその行方を占う試金石になりそうだ。