人型ロボットがスケボー実演 ATRと京大、人間並み運動性能を公開

2025年9月11日、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)は京都大学と共同開発したAI搭載の人型ロボットがスケートボードでスラローム走行を行う様子を公開した。人間並みの実時間運動性能を実現したとし、研究成果を披露した。
スケボー走行で人間並みの動作を実現したAIロボット
ATRと京都大学は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、2020年から人型ロボットの運動性能研究を進めてきた。
22年には「ロボットスケートパーク」を整備し、同研究所が開発する「サイボーグAI(※)」を用いた模倣学習を本格化。人間がスケートボードで滑走する際の脳波や筋肉の動きを計測し、それをロボットに学習させる取り組みを重ねてきた。
今回のデモに登場したのは、身長152センチ、体重約40キロのロボットである。
昨年の初公開では腰の上下動による重心制御が中心だったが、今回は上半身も活用して全身運動を組み合わせることで、より人間に近い滑走を披露した。
サイボーグAIは1秒間に28時間分の未来予測を計算し、バランスを崩した状態からの即時回復を可能にする。この仕組みにより、コースの傾斜やスラロームにも柔軟に対応できるようになった。
※サイボーグAI:人間の脳波や筋肉の動きを解析し、ロボットに模倣させるためにATRが開発したAI技術。
スポーツ模倣で進化するロボット 社会実装の可能性と課題
今回の成果は、介護や医療、物流といった人手不足が深刻な分野に大きな影響を与える可能性がある。
人間に近い動的制御を習得したロボットは、従来機械では対応が難しかった作業を担えるため、現場負担を軽減し、生産性を押し上げる効果が期待できる。特に高齢化が進む日本では、介助支援やリハビリ補助といった場面での活用が現実味を帯びてきたと言える。
一方で、課題も少なくない。
高速演算を前提とする制御には膨大な計算資源が必要となるため、コスト面でのハードルは依然高いと思われる。
さらに、人間の脳波や筋肉データを活用する研究手法には、提供者のプライバシーや倫理面の議論も不可欠である。もし商用展開が進めば、データ利用の透明性や安全性をどう担保するかが問われることになるだろう。
人間の状況に応じた細かな動きを学習させることで、ロボットは「作業機械」から「共生パートナー」へと位置づけが変わるかもしれない。
今回のスケボー実演は、その未来を先取りした象徴的な一歩と捉えられるだろう。