三重精機、AI図面管理で見積作成を高速化 属人化解消と柔軟な運用を実現

2025年8月22日、自動車部品メーカーの三重精機が、New InnovationsのAI図面管理システム「図面バンク」を導入したと発表した。見積作成の効率化と図面検索の迅速化を同時に達成させ、生産現場の課題解決を図る。
三重精機、AI導入で加工見積の遅延を解消
三重精機では、新規販路拡大に伴い見積依頼が急増し、生産技術部の負担が高まっていた。担当者ごとに加工見積が分散し、回答が遅れる属人化が課題となっていたという。さらに、図面や関連書類を紙で管理していたため、必要情報の検索に時間を要し、顧客対応の迅速化が難しかった。
こうした背景を受け、同社は費用対効果と機能性、将来的な全社展開の可能性を評価するため、図面バンクを採用した。
同システムは、図面と関連書類(見積書、CAD/CAM(※)ファイルなど)をクラウド上で一元管理し、AIが類似形状を即時検索する仕組みを備える。これにより、過去案件からサイクルタイムを引用しやすくなり、見積書作成に要する時間が大幅に短縮された。
また、外出先や工場外でも図面閲覧が可能となった。
20代から60代まで幅広い社員が活用しているが、操作性の面でも大きな障壁はないという。
※CAD/CAM:設計(CAD=Computer-Aided Design)および製造(CAM=Computer-Aided Manufacturing)を支援するシステム。設計データを基に加工を効率化する。
属人化解消の波及効果とリスク管理の課題
人手不足が進行する国内製造業では、熟練者に頼らず若手が見積業務を担える仕組みが今後の競争力維持の鍵となり得る。
そのため、見積作成のスピード化と人件費削減が同時に実現できる「図面バンク」は、業界全体の視点から見ても大きな価値になりそうだ。
さらに、AIによる類似検索機能の精度が高まれば、将来的には自動見積やコスト最適化といった高度な活用も見込まれる。
こうした仕組みが普及すれば、見積から製造へのリードタイム短縮が業界標準となるかもしれない。
一方、クラウド型である以上は、サイバー攻撃による情報流出やアクセス権限管理の徹底は不可欠だろう。
特に図面は知的財産の核心を担うため、セキュリティレベルの維持と運用体制が今後の焦点になると考えられる。