台湾・鴻海、純利益27%増で予想超え AIサーバー需要が追い風に

2025年8月14日、台湾の鴻海精密工業が2025年4~6月期決算を発表した。
純利益は前年同期比27%増の443億6000万台湾ドルとなり、市場予想を大幅に上回った。消費者向け電子機器需要が低迷する中、AI関連サーバーが業績を支えた形だ。
AIサーバー需要が収益を牽引し市場予想を上回る
鴻海精密工業の第2四半期純利益は443億6000万台湾ドル(約2170億円)に達し、アナリスト予想の361億4000万台湾ドルを大きく上回った。前年同期比では27%増と大幅な伸びを示し、売上高も16%増となった。
世界的にスマートフォン需要が鈍化する中で、同社の収益を下支えしたのはAI関連サーバー(※)である。
同社は米エヌビディア向けにサーバーを供給している。アップルのiPhoneを中心とする受託生産は、依然として同社の売上の柱だが、景気減速に伴う消費低迷の影響は避けられない状況だ。そのためAI分野が新たな成長ドライバーになりつつある。
同社は米中摩擦や台湾を巡る地政学的リスクを背景に、生産拠点の多様化を加速させている。5月には通期売上成長率が予想を下回る可能性に言及しており、外部環境の変化が収益見通しを不安定にしているのも事実である。
※AIサーバー:人工知能(AI)の学習や推論に特化した高性能コンピュータ。GPU(グラフィックス処理装置)を多数搭載し、大量のデータ処理を短時間で行える。
AI依存強まる鴻海、成長余地とリスクの両面
鴻海にとって、AIサーバー需要の拡大は大きなメリットとなっている。
エヌビディアとの協業を通じ、生成AIの成長トレンドに乗ることで高収益分野を確保できることは明らかであり、従来のスマートフォン依存からの脱却を後押しする可能性がある。
加えて、世界各国でAIインフラ整備が進むことは、同社の供給力を発揮する好機となりうる。
ただし、需要の変動や半導体サプライチェーンの逼迫が収益に直結するため、AI関連への依存度が急速に高まることはリスクでもある。
さらに、米中摩擦を巡る地政学的緊張は、サーバーやスマートフォンの双方に供給網リスクをもたらしているため、今後は依存構造の是正と生産拠点分散のバランスが焦点になると思われる。
今後、AIサーバー事業が鴻海を次の成長段階へ導くか、それとも外部リスクの影響で成長が制約されるか、投資家や市場関係者は、同社がどこまで多角化を進め、安定的な収益モデルを確立できるかを注視していることだろう。