東芝、AI OCR Synchro+提供 中小企業向け帳票処理の精度と効率向上

2025年7月15日、東芝デジタルソリューションズは新クラウド型AI-OCRサービス「AI OCR Synchro+」の提供を開始した。帳票処理の精度向上に加え、中小企業やPoC導入企業向けの新料金プランが導入の決め手となりそうだ。
支払期限や日付印も自動処理 精度と柔軟性を両立した新AI-OCR
東芝デジタルソリューションズが提供を開始した「AI OCR Synchro+」は、2020年より展開されてきた「AI OCR文字認識サービス」の後継となるクラウド型AI-OCRサービスである。従来の文字認識技術に最新のAI機能を統合し、帳票の構造解析や認識精度を飛躍的に高めた。
最大の特徴は、読み取り対象項目の拡張と高精度化である。請求書に含まれる「支払期限」「支払方法」といった項目への対応に加え、税公金関連の帳票に見られる「日付印」の自動読み取りにも対応。東芝グループ内での活用実績をもとに、企業実務に直結する機能を重点的に強化した。
さらに、単に帳票内の項目を読み取るだけでなく、取得した値があらかじめ定義した規定範囲内かどうかを即時にチェックし、異常値があれば通知する機能も新たに実装。手作業による照合・訂正といった工程の大幅な削減を可能とした。
また、利用規模に応じた柔軟なプラン設計も導入された。「スモール基本プラン」は月額3万円で月1万項目まで処理可能であり、1帳票あたり20項目とすれば月500枚の読み取りが可能だ。
加えて、1カ月限定の「トライアル基本プラン」も同条件・同価格で提供され、PoC(※)を進める企業にとって手軽な検証手段となる。
※PoC(概念実証):新しい技術やシステムの実用性を検証するために、限られた範囲で試験的に導入・運用するプロセスのこと。正式導入前に効果や課題を把握する目的で行われる。
中小企業のDX促進に期待 普及の鍵は業務適合性と人材対応
「AI OCR Synchro+」の導入により、帳票処理にかかる人的コストの削減やヒューマンエラーの低減が見込まれる。特に中小企業にとっては、月3万円という価格設定が現実的で、初期投資を抑えた上で業務効率化を図る手段となり得るだろう。
また、規定値チェック機能など、単なる文字認識を超えた業務連携型のAI-OCRである点は、内部統制やコンプライアンス対応を重視する企業にとって大きな魅力と言える。特に財務・経理部門における属人化の解消や、業務標準化の一助となる可能性が高い。
一方で、導入現場ではOCR結果を業務フローに統合するためのシステム設計や、人材教育の負担が発生することも予想される。特に中小企業では、現場担当者のITリテラシーや既存業務の柔軟性が普及スピードに影響を与えるだろう。
今後、東芝がどこまで多業種・多業務に最適化されたテンプレートを提供できるかがカギとなる。
AI-OCR市場は国内外のスタートアップや大手IT企業がしのぎを削る分野でもあり、Synchro+の精度と価格のバランスが評価されれば、中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)普及を後押しする代表的サービスとして成長する可能性がある。