SLASH VISION、USDC担保の後払い決済「Slash Card」事前登録を開始 日本初の暗号資産BNPLが誕生へ

2025年6月30日、シンガポールのSLASH VISIONは、USDC(米ドル連動ステーブルコイン)を担保とする後払い決済「Slash Card」のクローズドβ版について、事前登録を開始したと発表した。日本市場でも初の試みとなるUSDC担保型BNPLが実現に向けて動き出した。
USDC担保型BNPL「Slash Card」が日本市場に登場
SLASH VISIONが発表した「Slash Card」は、米ドルに価値を連動させたステーブルコインUSDC(※1)を担保として利用者が買い物を行える後払い決済サービスである。ユーザーは自身のアンホステッドウォレット(MetamaskやPhantomなど)に保有するUSDCを預け入れ、その価値をもとに商品やサービスの決済が可能になる仕組みだ。
支払い対象はオンラインショップのみならず、QRコード決済などを通じて実店舗にも拡大される予定であり、仮想通貨によるリアルな購買体験が一層広がることになる。同社は「暗号資産と現実経済をつなぐインフラ」としての役割を強調している。
クローズドβ版の提供時期は、当初計画の9月から変更され、2025年10月末以降に順次提供される見込みである。SLASH VISIONによれば、提供開始時期を遅らせた理由は、主要機能のチューニングとユーザー体験の最適化を図るためであるという。
すでに同社の公式サイトでは事前登録が開始されており、登録者にはサービス開始時期や新機能の通知が順次送られる。同社はこの事前登録によって需要を見極め、安定したサービス運用の準備を進めるとしている。
※1 USDC:米ドルと1対1の価値で連動するステーブルコイン。Circle社が発行し、価格の安定性と透明性が評価されている。
金融包摂の加速か、新たな信用リスクの懸念も
「Slash Card」が実現すれば、従来の信用スコアに依存しないBNPL(※2)モデルが普及する可能性がある。
特に、銀行口座や与信履歴を持たないユーザーでも、暗号資産を担保にすることで「信用取引」が可能になる点は革新的だ。DeFi(分散型金融)とリアル経済を結ぶ架け橋として、Web3領域のユースケース拡大につながるとみられる。
一方で、価格変動の少ないUSDCを担保とするとはいえ、暗号資産の規制や資産の移動に対する制限、技術的なリスクは依然として残る。また、担保が十分でない場合の返済不能リスクや不正利用に対する懸念も無視できない。
それでも、日本で初めてUSDCを担保とするBNPLが提供される意義は大きい。新しい金融インフラとして、ユーザーの選択肢を広げる起点になることは間違いないだろう。
※2 BNPL(Buy Now, Pay Later):商品やサービスを即時に受け取り、代金の支払いを後回しにできる決済方式。近年は若年層やクレジットカードを持たない層を中心に世界的に普及している。
「Slash Card」公式サイト:https://pre-card.slash.vision/