日本標的の詐欺メールが急増 生成AIが突破した「言葉の壁」

2025年6月19日、米セキュリティー企業プルーフポイントが発表した調査により、5月に世界で検出された新種の詐欺メールのうち、8割以上が日本を標的にしていたことが明らかになった。
生成AIの進化により、言葉遣いの不自然さが消え、「言葉の壁」が崩れたと同社は分析している。
言葉遣いが自然な詐欺メールが急増中
詐欺メールの手口が高度化し、日本がかつてないほど狙われているようだ。
米セキュリティー企業プルーフポイントの調査によれば、2025年5月に確認された新種の詐欺メール7億7千万通のうち、詳細分析が可能だった2億4千万通の81.4%が日本向けであった。
同社は全世界のメールの約4分の1を対象に調査しているとされるが、この詐欺メール数は過去最多に登る。
背景には、生成AIの進化により、日本語の自然な文体が容易に再現可能となり、「言葉の壁」が突破されやすくなっている状況がある。
また、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとしたサイバー攻撃の活発化も影響している。2022年以降、詐欺メールは世界的に増加傾向にあり、2024年には毎月1~2億通規模だったのが、2025年には5億通以上へと跳ね上がった。
プルーフポイント日本法人の増田幸美氏は、「従来の日本語の詐欺メールは間違った言葉遣いで見破りやすかったが、生成AIが進歩して自然な文章を作り出している。」と警鐘を鳴らす。
特に証券会社を装ったメールが多く、記載されたリンク先に個人情報を入力すると、メールアドレスやパスワードを抜き取られ、口座乗っ取りの被害に発展する例が確認されているようだ。
AI進化で精度増す攻撃 防衛策は追いつくのか
企業や個人のセキュリティ意識が追いつかない中、サイバー攻撃手法は多様化しつつあるといえる。詐欺メールは単なる情報窃取だけでなく、ウイルス感染やランサムウェアなど他のサイバー攻撃への入口にもなっている。
AIが文章を自然に生成できるようになった現在、従来の「怪しい日本語」という検知基準はすでに通用しないと考えるべきだ。
今後、国内企業に求められるのは、メールの送信元や文面を自動解析して危険性を判定する高度なフィルタリング技術の導入などであろう。
また、個人レベルでも、リンクを不用意にクリックせず、公式アプリやサイトでの確認を徹底することが被害を防ぐ鍵となる。