AIが企業サイトの文脈を理解し翻訳 Stormが「御社専用」多言語化支援を強化

2025年6月13日、東京都港区のAIスタートアップStormは、企業サイトの文脈を自律的に学習し、高精度な翻訳を行うAIエージェントの提供を開始した。既存の翻訳課題に対応する多言語化支援として、国内企業への展開を加速させる構えだ。
Storm、AIが企業文脈を学習し自律翻訳する新機能
Stormは、多言語化サービス「AIシュリーマン」の機能を強化し、企業ごとのトーンや専門用語を理解して翻訳を行う「御社専用AI翻訳エージェント」の提供を開始した。
翻訳だけでなく、校正や学習までを自律的に担う仕組みで、OpenAIの最新LLM(※)を活用し、従来よりも精度の高い翻訳体験を実現する。
具体的なプロセスとしては、まず企業サイト全体の文章をAIが解析し、専門用語や独自表現を把握する。その内容を元に知識ベースを構築し、高精度な翻訳を実行する。
その後、翻訳結果を校正し、得られた情報を再び学習内容に取り込むという流れである。
さらに、翻訳に用いられるデータは全て厳格に管理されており、社外のAIモデルに提供されることは一切ないという。
従来のウェブサイト翻訳では、文脈を無視した直訳やブランドトーンの不統一といった問題が多く、ビジネス現場では実運用に支障をきたす場面も少なくなかった。
今回の新機能は、そうした実務上のニーズに応える形で開発された。
※LLM(大規模言語モデル):大量の文章データを学習することで自然な文章生成や文脈理解を可能にするAIモデル。OpenAIのGPTシリーズなどが代表例。
ブランド翻訳の高度化で企業の海外展開を後押しへ
Stormの新機能は、今後企業のグローバル展開を支援する有力なツールとなりそうだ。
特に、ウェブサイトを通じて世界中のユーザーにブランドを訴求したい企業にとって、文脈やスタイルを維持した多言語化は重要な要素になると思われる。
AIシュリーマンでは、今後さらに企業が保有する過去の翻訳資産やスタイルガイドが学習対象に加えられる計画だ。これにより、AIが企業の“言葉の資産”を蓄積・再利用できるようになり、表現の一貫性とブランド適合性が一層高まる可能性がある。
他方で、すべての業種にとって万能な解決策とは限らない。
複雑な業界用語や頻繁に更新されるコンテンツを多く扱う分野では、AI翻訳が追いつかない場面も考えられる。また、完全な自動化を前提とする運用は、校閲の人手を削減できる一方で、最終品質へのチェック体制が問われることにもなるだろう。
それでも、翻訳精度と運用効率の両立を目指す企業にとっては、今回のStormの試みは革新的な選択肢と言える。今後の実運用例や導入事例が広がれば、日本発のAI多言語支援が、国際展開のスタンダードになる可能性もあるだろう。