電通×LINEヤフーが顧客分析を革新 新プロジェクト「SynWA」始動で広告精度が飛躍

2025年6月11日、電通と電通デジタルは、LINEヤフーと共同で分析プロジェクト「SynWA project(シンワプロジェクト)」を始動したと発表した。
3社のデータを統合し、広告主企業が自社顧客を高精度に把握できる新ソリューションの提供が開始された。
電通・LINEヤフーが保有データを統合し分析精度を大幅向上
SynWA projectでは、電通および電通デジタルが蓄積してきたテレビ視聴ログやアンケート調査結果などの生活者データに、LINEヤフーが有する「LINE公式アカウント」の利用履歴や「Yahoo! JAPAN」上の検索・購買行動データを掛け合わせて分析を行う。
これにより、従来よりも詳細な顧客像の可視化が可能となり、企業は1st Partyデータ(※1)と統計加工された3社のビッグデータを組み合わせることで、マーケティング施策の立案から広告配信までを一気通貫で最適化できるようになる。
なお、3社の連携は今回が初めてではない。
2019年には電通と旧ヤフーが「HAKONIWA」プロジェクトを、2020年からは電通と旧LINEが「LINE DATA SOLUTION」をそれぞれ展開してきた経緯がある。
今回のSynWA projectは、LINEとヤフーが統合した現在のLINEヤフーと、電通グループの分析資産をシームレスに連携させた新フェーズと位置づけられる。
SynWAという名称には、「Sync(同期)」と「Synergy(相乗効果)」の意を込めた「Syn」と、3社の輪(和)を表す「WA」が組み合わされている。
単なるデータ統合ではなく、知見と技術の融合による革新的なマーケティングソリューションを目指す姿勢が色濃く表れている。
※1 1st Partyデータ:企業が自社ウェブサイトやアプリなどで直接取得したユーザー情報。外部提供データと比べて正確性が高く、プライバシー保護の観点からも重視されている。
高精度マーケティングの実現へ 企業の活用広がるか
SynWA projectの発足は、広告業界全体における「ポストCookie時代」への対応の一環ともいえる。
近年、個人情報保護規制の強化により、3rd Party Cookieの活用が困難になる中、企業は信頼性の高い自社データと、外部データとの適切な連携による精度の高い分析手法を模索している。そのような状況下では、SynWA projectは「安心」と「精度」の両立を図る仕組みとして注目できる。
企業にとっては、広告費のROI(※2)を最大化できることが最大の利点だろう。
性別・年齢・地域といった一般的な属性だけでなく、関心領域や購買傾向までを反映したターゲティングが可能になれば、限られた予算でも的確なユーザー接触が見込める。
一方で、データ利活用の正当性や透明性への社会的な目は今後さらに厳しくなるとも考えられるため、運用面での説明責任やガバナンス体制の構築も不可欠だろう。
SynWA projectがこの課題をどう乗り越えるかが、次世代マーケティングの未来を左右すると言っても過言ではない。
※2 ROI:Return On Investmentの略。投資した金額に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標。