2026年9月28日、国内のAlpacaTechは日本生命保険相互会社と、議決権行使業務を支援するAIエージェントシステム「VotePilot」を共同開発した。日本生命が議決権行使業務にAIを本格活用するのは初めてで、Snowflakeをデータ基盤として業務の効率化を図る。
日本生命、AIで議決権行使の精査を支援
日本生命は議決権行使助言会社を利用せず、自社の判断で保有株式の議決権を行使している。2025年7月から2026年6月までの1年間では、上場企業の議決権行使が約1万3,000議案にのぼり、担当者が株主総会の招集通知や関連書類を1社ごとに確認していた。
VotePilotは、こうした業務で日本生命の「議決権行使精査要領」に照らして、精査が必要な議案を抽出するシステムである。AIエージェントが同要領を参照し、各議案について一次判断を支援する仕組みとなっている。
AlpacaTechはSnowflakeのプレミアパートナーであり、Snowflakeをデータ基盤に採用。Snowpark Container Servicesを活用してVotePilotを構築した。議決権行使の判断に必要なデータをAI-Readyな形式に整備し、Snowflake上で管理することで、AIエージェントによる情報参照を可能にしている。
特徴は、精査の判定結果だけでなく、その根拠となる情報まで提示する点だ。AIエージェントは招集通知などの開示書類から議案内容や関連ページを整理し、精査が必要な理由とともに、原本の該当箇所を示す。担当者は根拠を探す手間を省きながら判断でき、判定経緯を事後に検証することも可能になる。
さらに、議決権行使精査要領の基準を個別の判定プロセスへ分解し、フローチャートに変換したうえで、AIエージェントが順次処理する仕組みも実装している。
AI活用で対話と精査への時間を拡大
VotePilotの導入によって、精査対象議案の抽出にかかる時間を大幅に短縮できるとされる。これにより、担当者は浮いた時間をより細かな議案の精査や、投資先企業との対話に振り向けられるようになる。
機関投資家が投資先企業の状況を深く理解するための対話に、これまで以上のリソースを配分できれば、個別事情を踏まえた議決権行使につながる可能性がある。日本生命は、こうした取り組みがスチュワードシップ活動(※)の実質化につながり、企業と株主の対話を深めることにもつながると考えている。
一方、AIによる一次判断を業務に組み込む以上、最終的な判断を担う担当者がAIの判定根拠を確認する運用は重要になる。VotePilotは原本の該当箇所や判定理由を提示する設計であり、人による確認を支援する点が業務利用上のポイントになると言える。
今後、AlpacaTechは今回の共同開発で得た知見を生かし、金融機関の専門的で複雑な業務を対象に、判断基準の構造化から関連情報の収集・整理、根拠情報の提示までを一体的に支援するAIエージェントの開発・導入を進める方針だ。
また、Snowflake上でのAIエージェントを活用した業務アプリケーション構築や、Snowflake CoWorkの導入・活用支援にも取り組むとしている。
※スチュワードシップ活動:機関投資家が投資先企業との建設的な対話などを通じ、企業価値の向上や持続的成長を促すための活動。