AI検索の無断要約に独占禁止法の影 公取委が報道機関記事利用を調査へ

生成AIを用いた検索サービスを巡り、公正取引委員会が独占禁止法上の論点も視野に、実態調査に着手する方針であることが分かった。
報道機関の記事が許諾なく回答生成に利用されているとの指摘を踏まえ、状況の把握を進める。
AI検索の回答生成で独禁法上の問題となる可能性
23日、生成AIを活用した検索サービスを巡り、公正取引委員会が実態調査に乗り出す方針であることが明らかになった。
調査では、報道機関の記事が許諾なく回答生成に利用されているとの指摘を踏まえ、取引実態や運用状況を確認する。
対象には、米グーグルや米マイクロソフト、米新興のパープレキシティ、LINEヤフーなどが含まれ、対話型AI「ChatGPT」を提供するOpenAIも調査対象となる可能性がある。
AI検索は、従来の検索のようにリンクを並べる形式とは異なり、質問に対して要点をまとめた回答を示す点が便利とされている。
一方で、ニュースの要約表示が広がれば、報道機関がサイト訪問を通じて得てきた広告収入に影響が及ぶ恐れがある。
公取委は、条件次第では優越的地位の乱用など独占禁止法上の問題となり得るとみて、実態の把握を進める方針だ。
公取委は2023年に公表したニュースメディアに関する報告書で、IT大手が記事利用料を不当に低く設定、または無償で取引した場合、優越的地位の乱用に該当する恐れがあると指摘してきた。
今回の調査は、その延長線上に位置付けられる。
規制か共存か AI検索を巡る次の論点
今回の実態調査がもたらす最大のメリットは、AI検索と報道機関の関係が、曖昧な利用慣行から、条件を伴う取引関係へと移行する端緒となり得る点だろう。
生成AIが要約を通じて新たな価値を生む以上、その基盤となる記事の利用条件や対価が論点化するのは自然な流れだと考えられる。
公取委が競争政策の視点から関与すれば、報道機関側の交渉余地が広がり、広告依存に偏った収益構造の見直しにつながる可能性もある。
一方で、AI検索事業者にとっては、回答生成の自由度が制約される懸念が残りそうだ。
要約や引用の範囲が厳格化されれば、利便性を強みにしてきた検索体験が変質する恐れも否定できない。
加えて、許諾や対価支払いの仕組みが複雑化すれば、資金力や法務体制に乏しい新興事業者ほど負担が重くなり、市場参入の壁が高まる展開も想定できる。
今後の焦点は、規制による抑制か、ルール整備による共存かという二項対立をいかに乗り越えるかに移るだろう。
短期的には、公取委の調査を受け、情報源の明示やライセンス契約の拡充など、事業者による自主的な対応が進む可能性がある。
こうした動きは、主要プレイヤーが地域ごとの規制環境に適応してきた過去の経緯とも重なり、段階的な調整局面に入るとみられる。
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