飯塚市で防災DX実証実験、渋谷Web3大学のDID/VC検証

渋谷Web3大学株式会社は、福岡県飯塚市において、DID/VCを活用した防災実証実験を開始すると発表した。
防災教育と避難所での認証を連動させる試みで、同社は、防災分野でのDID/VC実証として「日本初、世界初、自治体初の挑戦」と位置付けている。
飯塚市でDID/VC防災実証 避難所認証まで一体検証
渋谷Web3大学株式会社は22日、DID/VC(※)を活用した防災実証実験を2025年12月より開始すると発表した。
本実証実験は、飯塚市の「令和7年度先端情報技術実証実験サポート事業」に採択されたプロジェクトで、防災分野でのDID/VC活用では、世界初規模の検証だという。
プロジェクトは渋谷Web3大学を中心に、株式会社かんがえる防災、Turing Japan株式会社の3社連合で推進され、渋谷Web3大学Createコースメンバーを含む総勢15名以上のプロジェクトチームが参画する。
特徴は、防災を学びながら得た証明書が、災害時の避難所受付における認証に用いられる「一つの証明書、二つの価値(One VC, Two Values)」というコンセプトにある。
平時と有事を一つの証明書でつなぐことで、平時と有事をつなぐ新しい防災の形を検証する。
実証は三つのパターンで実施される。イベント参加者向けの即時発行型、8週間の継続学習型、そしてコンソーシアムチェーンを用いた自治体イベント型である。
パブリックチェーン(IOTA)とコンソーシアムチェーン(東芝)を用い、DID/VCの発行から認証までの一連の流れを防災シミュレーションの中で検証する。
防災教育には、地域特性を反映した全56問のクイズプログラムを採用する。
暗記ではなく、判断力を養う内容とし、実証終了後は飯塚市の防災教育資産として公開される予定だ。
※DID/VC:DID(分散型ID)とVC(検証可能な証明書)の総称。
個人にひも付く証明情報をデジタル証明書として扱い、提示された情報が正当かどうかを検証できる仕組み。
平時の学びを有事につなぐ防災DX
本実証のメリットとして考えられるのは、防災教育と災害対応を分断せず、一連の流れとして設計し直そうとした点だろう。
平時の学習成果をDID/VCとして蓄積し、有事の避難所認証に活用する構想は、「なぜ学ぶのか」という動機付けを明確にし、防災教育の形骸化を防ぐ効果が期待できる。
とりわけ混乱が生じやすい避難所受付で、事前検証可能な証明を提示できれば、業務の迅速化や人的ミスの低減につながりそうだ。
一方で課題も残る。
自治体が関与するDID/VCの法的位置付けは、今後の議論の焦点となることが見込まれる。
証明の効力や責任範囲が十分に整理されない場合、制度実装の段階で運用が停滞する局面が生じる可能性も考えられる。
今後の焦点は、「防災DXは教育から始まる」というモデルを実効性ある形で示せるかどうかにあるだろう。
避難所運営の効率化にとどまらず、平時の学びを社会的に意味のある行動へ接続できれば、防災施策全体の質を底上げする取り組みへと発展する余地がありそうだ。
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