三菱重工グループ、全社員対象でデジタル人材育成を加速 AI・デジタル活用で価値創出と高収益へ

三菱重工グループは、国内外のグループ会社に在籍する全社員を対象に、DXを支えるDI(デジタルイノベーション)人材の育成を加速していると発表した。
AI・デジタル活用を通じて価値創出と高収益の実現を目指すとしている。
三菱重工、全社員対象のDI人材育成を加速
22日、三菱重工グループは、経営目標に掲げる「高利益体質と成長への投資の好循環」を実現するため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるDI(デジタルイノベーション)人材の育成を加速させることを発表した。
同社は、経営方針「Innovative Total Optimization(ITO)」の実現に向け、DX推進を支えるDI人材の育成を進めている。
同グループは国内外で約300社を展開し、設計・製造から販売、アフターサービスまで幅広い事業を手がける。
同社は、こうした多様な事業の持続的な成長に向け、AIなどのデジタル技術を活用した競争力強化が不可欠だとしている。
このため、一般社員から経営幹部まで全社員を対象に、体系的なDI人材育成プログラムを展開している。
特徴的なのが、成長を可視化する「DI人材認定制度」である。
認定はBASIC、ADVANCED、MASTERの3段階で構成され、教育受講や資格、プロジェクト経験を総合的に評価する仕組みだ。
最上位のMASTERは、デジタルイノベーション本部が定めた審査者による厳正な審査を経て認定される。
さらに、社員同士がAIやデジタル活用の知見を共有し合うコミュニティを展開している。
「グローバルITカンファレンス」や「AIサロン」「アイデアコンテスト」などを通じ、知見共有や提案の実装につなげているとしている。
認定制度は成長を生むか 三菱重工DXの実効性
本件のメリットは、デジタル活用を一部の専門人材に限定せず、全社員の共通基盤へと引き上げようとする点にあるだろう。
設計から製造、保守まで長いバリューチェーンを持つ三菱重工グループにおいて、現場の暗黙知にAIやデータの視点が加われば、業務効率化にとどまらない改善や付加価値創出が期待できる。
認定制度やコミュニティを通じて成長を可視化する設計は、従来型DX研修を超える試みと位置付けられそうだ。
一方で、「全社員対象」であるがゆえの希薄化リスクも考えられる。
認定制度が整備されるほど、資格取得そのものが目的化し、実務での活用や成果創出と切り離される可能性は否定できない。
安全性や品質を重視する製造業の文化を踏まえると、新たなデジタル施策が学習段階にとどまり、現場定着に時間を要する局面も想定できる。
今後の焦点は、DI人材育成がどこまで事業成果に結び付くかにあるだろう。
短期的には、AIやデータ活用を理解する人材が各部門に配置されることで、DX案件の立ち上がりが加速する展開も見込まれる。
ただし中長期的には、MASTER人材が専門家にとどまらず、事業と技術をつなぐ「翻訳者」として機能できるかどうかが、取り組み全体の成否を左右する要素になりそうだ。
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