国税庁、暗号資産の申告漏れで追徴税額46億円 調査結果を公表

2025年12月11日、国税庁は令和6事務年度における所得税・消費税の調査結果を公表した。
国内の暗号資産取引に関する追徴税額は46億円に達し、前年度を大きく上回った。
暗号資産取引を行う個人に対する調査件数や追徴税額が増加しており、調査結果の内容が示された。
暗号資産取引の追徴税額46億円に増加
11日、国税庁は令和6事務年度における所得税・消費税の調査結果を公表した。
国税庁が公表した資料によると、暗号資産取引を行う個人を対象とした所得税の実地調査は613件に上り、前事務年度の535件から14.6%増加した。
実地調査は、高額または悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に行われる深度ある調査とされる。
国税庁は、特別調査について、多額の申告漏れが見込まれる個人を対象に、1件当たり10日以上を目安に相当の日数を確保して実施すると説明している。
これらの調査によって把握された申告漏れ所得の総額は156億円、加算税を含む追徴税額は46億円に達した。
追徴税額は前年度の35億円から増加し、対前年比131.4%となった。
また、1件当たりの平均追徴税額は745万円となり、前年度の662万円から上昇した。
この水準は、所得税の実地調査全体における平均299万円の約2.5倍に相当する。
1件当たりの申告漏れ所得金額は平均2,538万円で、暗号資産取引に関する事案では、追徴税額が高額となる傾向が示された。
税制見直しの恩恵と、依然残る申告リスク
暗号資産を巡る税制は、今後の見直しによって投資環境が改善する可能性がある。
政府内では、現行の総合課税から申告分離課税(※)への移行が検討されており、実現すれば税率は一律20%程度とされている。
株式投資と同水準の課税体系が整えば、税負担の予見性が高まり、長期的な資産形成を後押しする効果が期待できる。
一方で、分離課税が導入されたとしても、申告義務そのものが軽くなるわけではないと考えられる。
今回の調査結果が示すように、国税当局は暗号資産取引の把握を強化しており、申告漏れに対する監視姿勢は今後も維持される可能性が高い。
税率が下がっても、記録管理や申告を怠れば、高額な追徴課税に直結する点は変わらないだろう。
今後は、税制緩和による市場活性化と、調査強化によるコンプライアンス徹底が同時に進む局面になると考えられる。
投資家にとっては、制度変更を正しく理解し、取引履歴を正確に管理する姿勢がこれまで以上に重要になりそうだ。
※申告分離課税:他の所得と合算せず、特定の所得のみを独立して一定税率で課税する方式。株式や投資信託の譲渡益などで採用されている。
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