国内クリエイターエコノミー市場2兆円超に拡大 生成AI普及が成長を後押し

一般社団法人クリエイターエコノミー協会は10日、三菱UFJリサーチ&コンサルティングと共同で実施した調査結果を公表した。
2024年の国内クリエイターエコノミー市場は2兆894億円に達し、生成AIの普及が成長を後押ししている。
国内クリエイターエコノミー市場は2兆894億円 モノ販売・動画広告などが約7割
10日、一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)と共同で実施した国内市場調査の結果を発表した。
クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの共同調査によると、2024年の国内クリエイターエコノミー(※)市場は2兆894億円に達し、2021年から年平均約15.5%で成長を続けている。
主力分野はモノ販売や動画投稿を中心とした広告・マーケティング、スキルシェアなどで、市場全体の約7割を占めた。
成長の背景には、生成AIの普及による創作過程の効率化がある。
アドビの「Adobe Firefly」をはじめ、BASEなどでの商品説明文の自動生成機能や、noteにおける生成AI活用の動きが広がっている。
調査では生成AIが創作プロセスの効率化に寄与し、新規クリエイターの参入を後押ししていると分析している。
一方で、生成AIの学習・活用をめぐっては、著作権や倫理面への懸念が指摘されている。
noteでは、クリエイター自身が「AI学習に利用する/しない」を選べる仕組みを導入するなど、倫理的な配慮を強める動きがみられる。
クリエイターを支える仕組みも整いつつある。VTuber事務所やインフルエンサー事務所では、誹謗中傷への対応や法的サポート体制を強化している。
さらに、個人クリエイターの法人化やエンタメ産業との連携、知的財産(IP)を活用したビジネス展開も広がりをみせており、クリエイターエコノミーの潜在市場規模は約14兆5,866億円に達すると推計されている。
※クリエイターエコノミー:創作活動を通じて収益を得る経済圏。
効率化の先に問われる『人間らしさ』
生成AIの普及は、創作工程の省力化と参入障壁の引き下げを同時に進められるという点で大きな利点がありそうだ。
構成案の作成や編集補助といった領域をAIが担うことで、表現の試行回数が増え、個人でも継続的にアウトプットしやすい環境が整うだろう。
その結果、これまで発信機会に恵まれなかった層が市場に参加し、新たな収益モデルが生まれる可能性も考えられる。
一方で、AI活用の広がりは作品の類似化や供給過多を招く恐れがある。
差別化が難しくなれば、クリエイター間の競争は激化し、発見されにくい状況が常態化しかねない。
また、著作権や学習データを巡る議論は途上段階にあるため、制度理解や対応に追われる負担が個人側に偏る懸念も残るだろう。
今後は、AIを前提とした創作環境のなかで、経験や価値観に根ざした表現が一層評価される局面に入るとみられる。
効率化はAIに委ねつつ、人間ならではの視点や文脈をどう打ち出すかが重要性を増していくと考えられる。
AIと共創する姿勢を確立できるかが、次世代クリエイターエコノミーの成長を左右する分岐点となりそうだ。
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