AI規制を連邦に一元化 トランプ大統領が州法抑制の大統領令に署名

2025年12月11日、トランプ米大統領は州レベルのAI(人工知能)関連法を抑制し、連邦政府による統一的な規制方針を打ち出す大統領令に署名した。
企業負担軽減を狙う一方で、州権限の侵害を懸念する声も上がっている。
AI規制の統一を目指す大統領令 州法が連邦方針と矛盾すれば資金供与停止も
トランプ大統領は11日、AI関連の州法が米国の技術的優位を妨げていると判断した場合、連邦ブロードバンド資金の供与を停止できると明記した大統領令に署名した。
対象は420億ドル規模の「ブロードバンド公平アクセス・展開(BEAD)基金(※1)」であり、商務長官が各州法を精査する。
トランプ氏は「われわれは一つの中心的な承認源を持ちたい」と述べ、企業が州ごとに異なる法律に従う必要はないと強調した。
ホワイトハウスのAIアドバイザーであるデービッド・サックス氏は、「最も厄介な州規制を押し返す手段を政権に与えることになる」と指摘している。
コロラド州など一部の州は、AIモデルに差別的な言語を組み込まない対策を導入しており、大統領令はそれを「イデオロギー的偏向」を生むと批判している。
一方、AIに関する超党派議員団の共同議長を務める民主党のドン・バイヤー下院議員は「米国人を危険にさらすAI企業の無法地帯を生み出す」と批判し、憲法修正第10条(※2)に違反する恐れを指摘した。
※1 BEAD基金:Broadband Equity, Access, and Deployment Programの略称。全米のブロードバンド網を整備し、地域間のデジタル格差を是正するための連邦補助金制度。
※2 憲法修正第10条:米国憲法における「州権主義」の根幹をなす条項。連邦政府に明示的に委任されていない権限は、州または国民に留保されると定めている。
自由と統制のはざまで揺れるAIガバナンス
大統領令によって、AI企業は州ごとの規制差に縛られず、スピーディーに技術開発を進められるようになる可能性がある。
特にスタートアップにとっては、資金調達や実証実験のハードルが下がり、グローバル競争での優位性を高める契機となりそうだ。
一方で、州の自主規制を抑制する動きは、倫理的リスクや誤情報対策の遅れを招く懸念もある。
多様な視点によるチェック体制が弱まり、AIの透明性が損なわれる可能性も否定できない。
今後は、連邦政府と州政府の対立を背景に、AIガバナンスの均衡をいかに保つかが焦点となっていくだろう。
米国が「自由なAI市場」と「責任ある開発」の両立を実現できるかが、今後の国際的な議論を左右する展開になるかもしれない。
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