シンガポール証券取引所、暗号資産の無期限先物を提供 機関投資家向け

シンガポール証券取引所(SGX)は、暗号資産ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を対象とした無期限先物取引の提供を開始した。金融機関や適格投資家を主な対象とする商品設計で、アジアのデリバティブ市場における暗号資産取引の多様化を後押しする動きといえる。
SGX、BTCとETHの無期限先物を正式ローンチ
SGXは11月17日、ビットコインとイーサリアムを原資産とする無期限先物(※)商品「SGX Bitcoin Perpetual Futures」と「SGX Ethereum Perpetual Futures」を同月24日に提供することを発表した。
対象は適格投資家、エキスパート投資家、機関投資家に限定されている。
両商品の基準価格には「iEdge CoinDesk Cryptocurrency Indices」が採用され、複数取引所のデータを集約してビットコインおよびイーサリアムの価格をリアルタイムに反映する。
SGXによると、基準値を算出する「iEdge CoinDesk Cryptocurrency Reference Rate Indices」は、シンガポール時間15時から16時に取引所間の価格変動を統合し、信頼性の高い市場データを提供するという。
この発表は、2025年3月10日にブルームバーグが報じた構想が承認を経て実現したものとみられる。
当時はシンガポール通貨庁(MAS)の承認待ちとされていた。
※無期限先物(Perpetual Futures):満期を持たずに建玉を保有し続けられるデリバティブ。
SGXが切り拓くアジアのデリバティブ市場 規制と透明性の両立へ
SGXによる無期限先物の提供は、アジアの機関投資家にとって大きな利点をもたらすだろう。
最大のメリットは、現物市場に依存せずにBTCやETHの価格変動リスクをヘッジできる点にあると考えられる。
これまで海外取引所に頼っていた投資家が、規制と透明性を兼ね備えた市場で取引できるようになり、暗号資産を制度的な資産クラスとして扱う流れが一段と進む可能性がある。
とはいえ、課題も少なくない。
流動性の確保は依然として懸念材料であり、参加者が限られる初期段階では価格乖離やボラティリティの高まりが想定できる。
変動により現物価格との乖離が広がれば、投資家の慎重姿勢が強まり、市場の成熟を遅らせる恐れもある。
それでも、SGXが示した枠組みは、アジアにおける規制適合型デリバティブ市場の形成を促す契機となる可能性がある。
今後、他の取引所が追随すれば、地域全体での信頼性向上や流動性の拡大が進み、暗号資産がより安定的な投資対象として認知される局面が訪れるかもしれない。
関連記事:
シンガポール証券取引所、機関投資家向けビットコイン無期限先物の計画発表

メタマスク、無期限先物取引を提供開始 ウォレットにポリマーケット統合も

IG証券、暗号資産ETFのCFD取引終了へ 金融庁見解受け2カ月で停止












