UBS、ブロックチェーン基盤で国際決済を高度化 トークン化預金の実証も視野

UBSはシンガポールのアント・インターナショナルとの戦略的提携を発表した。
ブロックチェーンを活用したトークン化預金に関するイノベーションを共同で進め、国際決済と流動性管理を支援するソリューションの構築を図るとしている。
UBSの「デジタル・キャッシュ」がアントの財務業務を支援
11月17日、スイス金融大手UBSはシンガポールのフィンテック企業アント・インターナショナル(Ant International)との戦略的提携を発表した。
UBSは今回の提携を通じて、自社開発のブロックチェーン基盤「UBSデジタル・キャッシュ(UBS Digital Cash)」をアント・インターナショナルのグローバル財務業務に導入する。
同システムは2024年にパイロット運用が行われたプライベート型ブロックチェーンで、スマートコントラクトにより決済を自動実行する仕組みを採用している。
これにより、従来の銀行間送金と比較して、清算処理の効率化と透明性の向上が期待される。
この連携ソリューションには、アントが社内で運用するブロックチェーンプラットフォーム「ホエール(Whale)」が組み込まれ、「UBSデジタル・キャッシュ」と連携する構成となる。
これにより、アント各拠点間で複数通貨建て資金をリアルタイムで移動できるようになり、従来の締め切り時間を超えた流動性管理が可能になるという。
両社はトークン化預金(※)を活用したソリューションの共同検討を進め、国際送金や流動性管理の高度化につなげる考えだ。
※トークン化預金:法定通貨をデジタルトークンとして発行し、ブロックチェーン上で送金・決済を即時に行う仕組み。
トークン化預金がもたらす利点と課題 今後の国際決済モデルを左右か
今回の提携は、ブロックチェーン技術を実用レベルで国際決済に導入する先進的な取り組みといえる。
最大のメリットは、資金移動の即時性と透明性の向上だろう。特に多国籍企業にとって、各拠点間の資金繰りをリアルタイムで把握できる点は、為替リスクの抑制や資金効率の最適化に寄与すると考えられる。
また、取引データが改ざん困難なブロックチェーン上で管理されることで、監査やコンプライアンスの負担も軽減される可能性がある。
一方で、課題も少なくない。
各国の金融規制やマネーロンダリング対策(AML)への適合、異なるブロックチェーン基盤間の相互運用性の確保などが実用化の障壁となりうる。
さらに、トークン化預金が金融機関間でどの程度普及するかは、規制当局の判断や国際標準の整備に左右されるだろう。
今後、UBSとアントが実証を重ねる中で、こうした課題を克服できれば、トークン化預金はグローバルな資金決済の新たな標準となる可能性がある。
銀行やフィンテックの協業が次の金融インフラを形作る転換点になるかもしれない。
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